大容量バッテリーのメリット

以前、「大容量バッテリー時代極まる」と題して、自作においては大容量が人気になるよ的なことを書いた。今回は大容量バッテリーはこんなメリットがあるんですよ的なことを書く。

まず言うまでもなくレンジ(1回の充電あたりの走行距離)が伸びる。私の6インチATボードは一回の充電でスピードに関わらず最低でも60kmは走る。ゆっくり走ればもっと伸びるが、これはそのためのボードではない。私の思うがままにスピードを出し、乗り心地も良く、バッテリー残量も気にしない。私の走りの欲求や本能のままに走りたいがためのボードだ。残量が無くなったから仕方なく今日はおしまい、・・ではなく自分の意思でその日の走行をおしまいにできる。

そして前日の走行距離、残量次第ではそのまま充電せずに持ち越して翌日以降も走ることができる。大容量ゆえ必ずしも毎回充電する必要がないのだ。

また、並列を増やすほど大容量低出力のセルを使うことができる。例えばSamsung 35Eや50Eだ。並列を増やすほど低出力セルの弱点を補いつつ容量を増やせる。この手の低出力セルは、出力(アンペア)が少ないと放電時間がより伸びる。高出力セルと低出力セル、同じ直列及び並列数(セル数)なら低出力セルのほうが容量が大きくなる。出力(パワー)と容量は相反する要素なのだ。

個人的な印象として、電動スケボーにおいては40Aあたりが「かなりパワーがあるボード」という認識だ。40Aはそれなりに乗り慣れた人じゃないと使いきれない。3年前の中華ハブモーターは1つあたり250W、それがデュアル。総出力500W。10s定格36Vならばせいぜい14A程度。比較すれば40Aがいかにパワー(加速力・登坂力)があるか分かるだろう。10sで40Aなら定格1440Wだ。もはや中華ハブモーターでは扱いきれないパワーとなる。

このようにモーターが扱えるパワー、または人間が使い切れるパワーは、ある程度の上限がある。(個人差アリ) それを大きく超えるバッテリー出力は無駄になるのだ。そのぶん出力は抑えて容量に振ったバッテリーパックにしたほうがその人にとっては幸せになるだろう。

Samsung 35Eセルは最大放電8A。電圧サグも考慮すると10p(最大80A)は欲しいところ。Evolve GTRの35E・10s4pは少しパワー不足だと個人的には思うが、Evolveはトップスピードを抑えている。一般的には過度なパワーを追い求めないちょうど良いバランスとも言えるだろう。

Samsung 50Eセルは最大放電(継続)は10A、しかしバースト(時間制限つき)で14Aまで放電できる。この場合最低でも5p、できれば8p(80A、バースト112A)は欲しい。これなら最大パワーの半分くらいで40Aを出力できるのでかなり余裕がある。

こんな感じで大容量で並列数が多くなるにもかかわらず、人間の操れるパワーには上限があるということは、1セルあたりの出力がかなり抑えられるということになる。つまり大容量なほどバッテリーセルの1つ1つの発熱や負担が減り、最終的に寿命が伸びる。

また並列ごとのサグも抑えられてバッテリーパック全体の電圧も安定しやすい。セル数が多いバッテリーパックは全体としてセルバランスも崩れにくくなるのだ。

あと回生充電におけるメリットを。VESCではブレーキ時の回生充電量の上限を設定する「Battery Current Max Regen」という項目がある。ハイブリッドカーでおなじみの回生充電。これの制限値はズバリバッテリーパックの許容量で決まる。簡単に言えばデカいバッテリーほどたくさん回生充電ができる。

小さいバッテリーだと強力なブレーキング時に生成された回生電力をバッテリーが充電し切れない。Battery Current Max Regenに制限を掛けて、充電し切れない分はVESCで熱として放散される。つまり無駄が出るのだ。デカいバッテリーなら高速走行からの強力なブレーキや下り坂でのブレーキで生成された回生電力をしっかり余すことなくバッテリーに戻すことができる。

例としてSamsung 30Qの1セルあたりの急速充電上限値は4A、2pなら8A。中華ボードにおいてスタンダードな2pバッテリーで話を進めるとして、ブレーキはそんなに長時間掛けませんよ、ということで多少多めに見積もって1.5倍の12A。ここらがセルの寿命やスペックを考慮してのBattery Current Max Regenの大雑把な30Q2pにおける設定値上限となるだろう。怖いならもう少し減らして8Aでも良い。

これが50Eだと1セルあたりの急速充電上限値は4.9A。8pだと39.2A。その1.5倍だと58.8Aもの回生電力を余裕持って充電できる。かなり激しいブレーキにおいても無駄が少なくなる。

同じ理屈で充電器におけるアンペアもかなり大きくすることも理論上は可能だ。50E12s8pなら20A充電も可能だろう。ただし専用の充電器、内部にも太い充電ケーブルを使い、20Aに耐えられる充電ジャックが必要となる。BMSも20A Charge以上の物が必要だ。

そもそも一般家庭の契約アンペアに上限がある。12s50.4V充電器で20Aならおおよそ1000W。AC100Vから約10A。電気ケトルでずっとお湯を沸かしているくらいの消費電力。ご家庭の契約アンペアが20Aならかなりキツイ。契約アンペアが30Aでも充電中にドライヤーやら電子レンジを使ったらかなりキツイ。むやみやたらに家庭での充電アンペアを上げるのも問題だ。

余談ではあるが、日産の電気自動車リーフは200V15Aの充電だそうだ。つまり100Vなら30A。電気の契約において60Aくらいで契約しないと話にならないらしい。

電動スケボーに話を戻して、わたしは12sのボードは全て4A充電で統一している。バッテリー容量に関わらず、1つの充電器で全ての12sボードに共通で使えるからだ。4A充電ならブレーカーが落ちる心配もない。充電など寝てる間に終われば良い。

最後に大容量バッテリーのデメリットも書く。重くなること、コストが掛かること、作る手間が掛かることだ。