自作用データベース(バッテリーセル編)

バッテリーセルの基本

おもにリチウムイオン、リチウムポリマーを使用するが、主流は円筒型のリチウムイオンセルである。

リチウムイオンは基本的に定格3.6V、満充電は4.2V。(例外的にハイボルテージ仕様の満充電4.35Vのセルも存在するが、まず使うことはない。)

※ LifePO4(リン酸鉄リチウム)に関してはこちらに私が知っている範囲で情報を投稿しております。電動スケボーで使われている一般的なLi-ionとは電圧が異なるので注意。

走れば走るほど電圧は低下していき、また鋭い加速、早いスピード、上り坂、強い向かい風ほどその傾向は強くなっていく。例えば15km/hと30km/hでは使うエネルギーに格段の違いがあり、もちろん45km/hにもなればさらにエネルギーを使う。逆に言えばゆっくり走ればさほどエネルギーは使わない。

下限は3.0V以下だがそこまで使うことはまずなく、停止時の1セルあたり3.4V近辺で残量がほぼ無しとみなす。実際は3.4V以下でも走るのだが、これ以下まで電圧が落ちると、なにかの拍子に(大きめの放電設定でアクセルオンなど)一瞬でも3.0V以下まで落ちた時に急激にバッテリーを傷めたり、シャットダウン機能が働いて走行中に突然止まったりする。

バッテリーの電圧は停止時は安定しており、アクセルオンで走り出すと放電のためにガクッと減少する。アクセルを戻すと電圧はある程度戻る。この放電により電圧が一時的におおきく落ちる現象を電圧サグなどと表現する。(停止時)3.4V付近でほぼ残量なしと見なすのはこの電圧サグのためである。停止時3.4Vならアクセルオンで3.3〜3.2Vまで瞬間的に落ちる。VESCの標準的なカットオフエンド設定(強制電源オフ)は1セルあたり3.1V。スピードが出ているときに電源が落ちると危険である。

最近はサムスン35Eやサムスン50Eなど低出力、高容量のセルは敢えて3.3V付近まで使うケースもある。3.4Vより下で粘る出力特性だからだ。0.1Vの差ではあるがこれが走行距離に影響する。

電動スケートボード各社、またVESCには保護機能として電圧が低下するとパワーを抑えて大きな電流を流さないようにするカットオフスタート機能強制エコモード機能を備える。大きな電流が流れるほどパワーが出るのだが、そのぶん電圧の落ち方(サグ)も大きい。低電圧時にそれを防ぐために放電量を抑える機能である。

基本的には3.4Vを下回ったらそろそろ走るのを止めたほうが無難であり、余計なトラブルを回避できる。

セルごとの特性と傾向

18650では概ね2500mAh級が高出力だが低容量、3500mAh級が低出力だが大容量という感じであり、21700では3000mAh級が高出力だが低容量、5000mAh級が低出力だが大容量という感じである。

しかし、21700においては3000mAhというセルはほとんど使われない。4000mAhが容量、パワーともにバランスが取れている。5000mAhはパワーは若干低いものの大容量という傾向がある。2022年においてはサムスン50Sというかなり強力な21700がリリースされており、これは4000mAh級に引けを取らないパワーを持ちながら5000mAh容量を維持する。そのぶん値段が高い。他のセルの2倍以上の価格である。(2022・1月現在)

基本的に容量(mAh)とパワー(最大放電アンペア)は反比例すると思っていれば良いだろう。

注意点

バッテリーセルを巻いているビニール製の被覆は非常に大事であり、このビニールを取ると銀色のボディが現れるが、これはすべてネガティブ(マイナス端子)である。被覆が破れてなにかの拍子にショートするとけっこう強烈な火花が出て非常に危険である。セルは大事に扱いたい。

なお、セルの被覆は交換可能である。

※参考リンク

↑ 絶縁リングなどと言われる紙。またはフィッシュペーパーなどと言われている。リングの中の穴の部分はプラス端子、リングの下の被覆を剥がせばそこはもうマイナス端子である。この絶縁リングは万が一に被覆が破れてショートすることを防ぐためにプラス極側に皮一枚を追加する養生のようなものである。

バッテリーの保管電圧と寿命

バッテリーを4.2V満充電の状態で保管するのは好ましくなく、出来れば満充電にするのは走る直前が望ましい。

4.2Vで保管するのと4.1Vで保管するのでは、寿命に2倍の差が出ると言われている。4.0Vなら3倍とも言われている。もし充電するのならば、天気予報を見て走る日の前の晩にでも充電するのがベターだろう。

セルに良くないのは、次に走る予定も決まっていないのにこまめに満充電にしてしまう行為だ。これは非常に良くない。

管理人も走り終わったら次に走るときまで放置している。充電は翌日に走る見通しがある時だけだ。

バッテリーセル(18650単体)を購入したことがある人ならわかるかもしれないが、購入時の電圧はだいたい3.3〜3.5Vであり、長期保管にはこれくらいが適している電圧である。

バッテリーセルの種類

18650という規格のセルが基本。直径18mm、長さ65mmの円筒形状のリチウムイオン二次電池である。

↑ 上の情報は少し古い。2022年においては完全に21700が主流となった。21700は直径21mm、長さ70mmであり18650より少し大きい。

これにメーカーやセルの名称があり、それぞれ放電特性や価格も変わってくる。電動スケートボードで有名なバッテリーセルは「サムスン30Q」であり、容量(3000mAh)と放電特性(公称連続放電15A)、そして今(2019.4月)では比較的低価格と、性能と経済性を兼ね備えたセルである。電動スケートボードのメーカーによっては30Qの使用を強く宣伝していることもある。30Qの公称最大放電電流は15Aということになっているが、実際には20Aまで使えるという。

他にも18650にはサムスン25R、サムスン35E、LG HG2、ソニームラタVTC5・V TC6、サンヨーNCR18650GAなどがあり、これらが電動スケートボードに使われる18650である。とくにソニームラタVTC6はわずかながらサムスン30Qよりも放電特性が良い。用途を電動スケートボードから外せば、18650の種類もまだまだたくさんある。

21700はサムスン40T、サムスン50E、サムスン50G、モリセルP42A、サムスン50Sなどがある。サムスン50Sは2022年に入ってようやく一般に入手できるようになった超高性能なセルであるが、かなり高額である。

30Q(18650・重さ48g) 10s4pで432Wh・1920g、最大放電60A(15A × 4p) ※30Qは20 Aまでいけるという評価もあるので80Aと考えても良い。

40T(21700・重さ70g)10s3pで432Wh・2100g、最大放電90A(30A × 3p) ※40Tは実際には25A程度という評価もある

同じ432Whでも30Qのほうが軽く仕上がる。さらにコストを考えると30Q40個のほうが40T30個よりも安い。(※相場変動により一概にそうとは言い切れなくなった。)

しかし40Tのほうが厚みが出るものの、面積はコンパクトに収まるだろう。どちらにもメリット、デメリットがある。

バッテリーセルの評価一覧

評価サイト

↑セルの放電特性を比較できます。

3500mAhリーグ

↑ 3500mAhの高容量・低放電のセル、サンヨー・パナソニック・サムスン・LG、4社のセルを比較したサイト。基本的に容量(Ah)が大きいほど、一度に流せる最大電流は小さい。3500mAhのセルは並列を多くして放電電流の弱さを補うことで効果を発揮する。

↑ 上の評価サイトを使いSamsung 30Q(赤線)と35E(青線)を1A放電で比較。カットオフスタートである3.4Vまで35Eのほうが長く放電できることがわかる。しかし1A放電は4pでも4A。電動スケートボードにおいてまったく実用性のない放電電流だ。ちなみに35EはEvolve GTRで10s4pで使用されている。

↑ 2Aで比較。最終的には35Eがわずかに長く放電しているが、4.2V〜3.5Vあたりまで30Qのほうが高い電圧を保っている。つまり常用域でパワーを出せるのは30Qなのだ。しかし3.4Vを下回ってからの粘りは35Eが圧倒的。3.1Vのカットオフエンドまで長く走れる。ゆっくりでも良いから「とにかく帰還したい、バッテリーよ、持ってくれ〜」という状況なら35Eが優勢だ。

↑ 5Aで比較。もう30Qが終始優勢。4pなら20Aなのだが、これだけ差がつけばどちらのセルでバッテリーを組んだほうが有利なのかわかるだろう。30Qは電動スケボーの放電電流領域においては最適なセルなのだ。

↑ 参考までに30Q(赤)とSanyo18650GA(青)を2Aで比較。当管理人は18650GAを12s10pで組んでいる。2A × 10p = 20A。この放電電流で長く走れるのは18650GA。12sなら定格43.2V × 20A = 864W。平地無風なら500Wで50km/h出ると考えれば充分なパワーだ。3.4Vでカットオフが始まってからはかなり粘る。しかし逆に言えば、10pなどとかなりの並列で組まないことには3500mAhセルに利点はない。40A、50Aなどで放電するパワー派なら結局10pでも30Qが優勢である。3p〜10pあたりまで、基本的には30Qで組めばほとんど問題ないということが改めてわかる。

「2A × 10p = 20Aで12s、864Wも出力すれば充分でしょ」と考えるならば3500mAhのセルをチョイスするのも良いだろう。体重が軽く、上り坂を頻繁に走ることがないならこの選択もアリ。

近年(2022年)電動スケボーにおいては、21700で2p〜4pをサムスン40TやモリセルP42A、5〜7pでサムスン50G、8p以上でサムスン50Eで組むのがコストと性能のバランスから考えて一般的だと思う。2〜3pのコンパクトサイズで容量も稼ぎたいならサムスン50Sで組むのもアリだがコストが跳ね上がる。

↓以下、各セルごとの放電特性一覧

Samsung 25R 18650 2500mAh
Samsung 30Q 18650 3000mAh
Samsung 35E 18650 3500mAh
Samsung 30T 21700 3000mAh
Samsung 40T 21700 4000mAh
Sanyo NCR18650GA 3500mAh
Sanyo NCR20700B 4000mAh