乗りやすいVESC設定とは

十人十色で設定の方法は様々だと思う。パワー派、電費派、バランス派、いろんな人がいるだろう。私はどちらかといえば電費派寄りのバランス派だろう。

私は基本的に大きめのバッテリー電流を好まない。電費を悪くするし電圧サグも大きくなるからだ。電圧サグとはアクセルオンでおおきく放電されたときの電圧の落ち具合のことで、電流値に比例して電圧の落ち方も大きくなる。個人的にはなるべくこれを抑えたい。

低いバッテリー電流設定なら否応にもダルくて遅くて誰でも乗りやすいマシンになるだろう。しかしこれは退屈でつまらない。そこでバッテリー電流を上げていきパワーと電費のバランスの取れた数値を探る。これは大して難しい作業でもなく自分の感覚で「これくらいの加速で丁度いいや」「これくらいトップスピードが伸びればいいや」という感じで決める。それ以上の数値にしなければ電費や電圧サグも悪化しない。基本的にはこれで設定終わり。

注意点としてはバッテリー電流とモーター電流にあまりにも設定差がありすぎるとトラブルを招く可能性があること。

表題の通り、ここから「乗りやすさとは何か?」を考えていく。持論は違和感のない自然なフィーリング。リモコン操作に対する反応が適度にダルく過敏ではないことだと思う。別の言い方をすればマイルドなフィーリング、ピーキーではないフィーリングという感じ。ピーキーだとわずかなリモコン入力でマシンが過敏に反応して体勢を崩しがち。これは危ない。

このピーキーとか、ダルい、マイルドなど・・・・このフィーリングはVESCの設定だけでなく、ドライブシステムやギヤ比、ウィールの大きさ、KV値など、これらにかなり大きく左右される。場合によってはVESCの設定だけではフォローしきれないくらい影響が大きい。

まず大きなウィール、ハイギヤードなギヤ比、これはマイルドな傾向が強くなる。アクセルやブレーキの入力に対しての初期反応が鈍い。構造的に大きめのウィールを使用するダイレクトドライブもこの傾向が強く、ダイレクトドライブはピーキーな操縦性になりにくい。勝手にマイルドになる感じだ。これらはVESCの設定も楽で、バッテリー電流だけでそれなりに乗りやすい設定を決めることができる。

逆に、小さいウィール、ローギヤードなベルトドライブやギヤドライブ、低KVの小径ハブモーターなど、これらはピーキーになりがちである。4WDもこの傾向が強くアクセル入力に対してトルクの立ち上がりが早い。バックトルクも同様でアクセルを抜いたときも即座に減速し始める。即座すぎてアクセルを抜いた瞬間にカクッと体勢が崩れる場合もあるほどだ。

大きいウィールに変えられるならば、手っ取り早くマイルドにできる。ギヤ比もハイギヤード寄りにすればマイルドになる。メカニカルな変更でマイルド寄りにしづらいのは低KVの小径ハブモーターと4WDだ。これらは構造的にピーキーになってしまう。

そこでスロットルカーブとランピングタイムの設定を変える。しかしスロットルカーブは出来ればフラットが良いと思う。そのほうが素直な操縦性になるからだ。しかしピーキーすぎたりダルすぎたりする時はスロットルカーブやランピングタイムを設定せざるを得ない。私の個人的な意見になるが、スロットルカーブの設定は優先順位が低く、上記のドライブシステム上どうにもならない時に仕方なく設定する、または最終的な味つけを整える仕上げという感覚だ。設定の基本はバッテリー電流(Battery Current Max)であり、パワーが強すぎると感じたらスロットルカーブではなくバッテリー電流を少し抑えて調整し、スロットルカーブはなるべくフラットを保つほうが良いと思う。

↑ これはFOCBOX Unityのスマホアプリのスロットルカーブ設定画面。上の線グラフがスロットルカーブ。アクセルやブレーキの入れ具合でどれだけパワーやブレーキを適用するかを定義する。緑の線はフラット。赤い曲線ではアクセルブレーキともにニュートラルに近い領域では緩やかにして、入力を強めるほど出力やブレーキも強くなる傾向にしている。こんな感じで、グラフの左右にあるシークバーでアクセルとブレーキの曲線を変更する。

その下のポジティブランピングタイムとネガティブランピングタイムは、アクセルとブレーキ、それぞれレバーを動かしたときの初期反応速度の定義。大きいほどダルくなり、小さいほどピーキーになる。私としてはスロットルカーブよりもランピングタイムのほうが重要だと感じている。

↑ metrのモード画面。緑円の「Add more parameters」からランピングタイム設定を付け加えることができる。アクセルオン、アクセルオフの反応が早い遅いをこれで変更できる。安全かつ気持ち良い走りをするためにもこれには拘るべきだ。上記の画像は私がダイレクトドライブで使用している数値。0.15がナチュラルなフィーリングだと感じた。0.6とかだとかなり違和感がある。

ランピングタイムとは「0→100%まで一瞬でスロットルを動かしたときに実際にVESCが動作する時間である」

例えばポジティブランピングタイムを0.3秒に設定した場合、0→100%まで一気にスロットルレバーを動かしたなら0.3秒の時間をかけて100%のパワーになる。0→50%なら半分の0.15秒という感じだ。これを0.6秒に設定すれば、スロットルを一瞬で0→100%まで入れたとき、100%のパワーになるまで0.6秒かかる。つまりスロットル操作に対して反応が鈍くなるのだ。ネガティブランピングタイムはこれのブレーキ側の設定である。

なお走ってる途中にアクセルオフにしてニュートラルにした場合、ポジティブとネガティブの設定のうち、大きい数値(時間)のほうが適用される。アクセルを抜いた瞬間にバックトルクでカクッと瞬間的に減速して姿勢を崩しがちになるのを緩和するにもランピングタイムの設定は大いに役立つ。スーパースポーツバイクに採用されているバックトルクリミッターのような使い方だ。4WDは若干この傾向がある。

() 上記はesk8buildersのフォーラムから得た知識であるが、実際に数値を弄るとアクセルオフに関しては数値の大小問わずネガティブランピングタイムが適用されているように思える。ちなみにアクティブはともかく、ネガティブも正の数値を使う。バッテリーリジェネやモーターブレーキのようなマイナス値ではないので勘違いに注意。

逆にダイレクトドライブのように、もともと反応がダルいドライブでネガティブランピングタイムを長めにすると、アクセルオフでの減速のし始めがワンテンポ遅れて違和感が出てくる。この場合は短めにすることて自然なフィーリングになる。

ピーキーなドライブ構成ならランピングタイムを遅くしてマイルドにし、マイルドなドライブならランピングタイムを早くして応答性を良くする、そんな感じで設定すると良いだろう。

もうひとつはデッドバンドだ。アクセルやブレーキの遊びに相当する項目。私はデッドバンドは極力少なめにして、わずかなスロットル入力でも動きに反映される設定を好む。

↑ ポジティブ・ネガティブのランピングタイム、そしてデッドバンド。metrを使うならこれらをModesの設定に加えておきたい。アクセルのオン・オフの瞬間的なフィーリング調整、違和感を消すにはこれらの数値を弄る。意のままに操れる走っていて気持ちの良いボードになるか、意にそぐわない違和感のあるゴミになるかはこの設定に掛かっていると言っても過言ではない・・・と私は思っている。

ボードが速くなればなるほど、これらの設定は重要だ。10000回アクセルオン、アクセルオフをし、10000回自分の感覚通りの動きをボードがしてくれる、これが重要だ。1回でも自分の感覚とズレれば最悪はコケることもありえるし、コケなかったとしても、そのボードを信じてアクセルを開けることができなくなるだろう。自分の感覚にしっかり合うように調整することはとても大事だ。