自作用データベース(バッテリー自作知識編)

直列と並列

10s4p、12s3pなどの表現をする。sはシリーズの略で直列数を表し、pはパラレルの略で並列数を表す。

10s4pなら10直列4並列である。

リチウムイオンは1セル(1直列)あたりの満充電は4.2V、10直列のバッテリーパックなら満充電で10倍の42V。12直列なら4.2Vの12倍で50.4Vが満充電である。充電器には必ず充電電圧が記載されているので直列数にあった充電器を使おう。

[6直列・・25.2V] [8直列・・33.6V]

[10直列・・42V] [12直列・・50.4V]

充電器に関してはこちらに詳しく記載しました。

直列が増え、比例して電圧が増えることのメリットは最高速度が伸びることである。モーターにはKV値という性能を示す指標がある。

「電圧 × KV値 = モーターの1分間の回転数」

電圧が大きいほど最高回転数が上がる。そして、KV値も大きいほど同様に最終的なスピードが伸びる。そのかわりKV値の大きさに反比例して基本的にはトルクは薄くなる。(電流である程度補えるが) KVは高ければ良いというものではない。

並列が増えると比例して使える電流が増える。例えばSamsung30Qセルの最大放電電流は公称15A。2並列なら30A、3並列なら45Aと倍々に増えていく。そのぶん、使うケーブルも太い(AWGの小さいケーブル)を使うことになるが、最終的にはESC(モーターコントローラー)の放電能力に左右される。例えば30Qの10並列で150Aという強力な放電能力を有するバッテリーパックがあったとしても、ESCの最大放電能力が20Aしかなければ、20A相当の許容電流のケーブルで済むという理屈である。

並列が増えることによる別のメリットは、同じ放電電流でも電圧の落ち方が緩やかになることである。1並列(1セル)で10Aの放電なら一気に電圧が落ちる。しかし2並列で10Aなら1セルあたりの負担は5A。4並列なら1セルあたりの負担は2.5Aという具合。

さらにもう1つのメリットはブレーキをかけた時の回生電流も多く扱えることにある。強いブレーキで大きな電流が戻った時にバッテリーがしっかり吸収してくれるのだ。

以上のことが絡み合うことでバッテリーの出力が決まる。

「電圧 × 電流 = ワット数」

ワット数は電動スケートボードのパワーに直結する。出力の大きいバッテリーにそれを許容する高出力のモーターを組み合わせることで強力なマシンとなる。しかしコストもかかり、重くて扱いの難しいマシンにもなる。自身の目的に合わせてバッテリーを選ぶ(組む)ことになる。

BMS

バッテリーマネジメントシステムの略であり、並列グループごとの電圧を均一に保つ役割を担う基板である。バッテリーセルに配線を繋げて使用する。これが無いと電動スケートボードのバッテリーは成り立たない重要な部品である。

このようにすべての並列が均一の電圧を保つように電圧を管理するのがBMSの役目であり、上記のバッテリーはパック全体で満充電42Vである。これが並列ひとつでもバランスを崩せば満充電42Vにはならない。

「BMSは、ある並列のグループがひとつでも4.2Vになれば、充電完了のシグナルを充電器に出す。その後、最終的にすべての並列グループの電圧が均一化されるまでBMSは動作する。」

これを充電のためのBMSと定義する。

放電にもBMSは使われる。BMS放電のメリットは、ある並列だけが極端に電圧が落ちた時にシャットダウンするというセルを保護するための安全装置的な役割である。しかしシャットダウンされるということは走行中に起こることであり、バッテリーを保護してもライダーを保護しないのでは本末転倒である。放電BMSはメリットとデメリットが混在しているのである。

自作データベース(バッテリーセル編)で述べているように、1並列3.4Vくらいで走るのを止めれば、かなりその手のトラブルは回避できると思われるがそれでも100%防げるわけではない。

BMSの種類

BMSはかなりの種類があり、メーカーも多い。(ほぼ100%中国製)

直列数ごとに10s用とか12s用など、またリチウムイオン用(Li-ion)やリン酸鉄リチウム用(Lifepo4)がある。放電電流、充電電流、バランス電流、大きさまで様々である。

上の画像はBMSの大手企業、Bestechの12s用BMS。これを見てもサッパリ分からない人がおそらく大半だろう。基本的に放電、充電の許容電流が大きいほどBMSも大きくなる。80A級ならかなりの大きさになり占有スペースもバカにならない。

BMSの配線

充電、放電ともに高いアンペアのBMSが性能に優れていて高価でありそのぶん大きい。しかしBMS放電には上述のとおりライダーの都合を無視した、1並列だけでも大きくバランスを崩したらシャットダウンする可能性があることも確かである。

そこでBMSとバッテリーの配線方法として、充電だけBMSを通して充電し、放電はBMSを回避してバッテリーからESCの要求のままに直接垂れ流し放電するという配線方法がある。先ほど定義した「充電のためのBMS」だけをやるのである。海外では「放電バイパス(discharge bypass)などと言われている。

放電バイパスに関しての細かい記述はこちら。

充放電ともにBMSを使うか、放電バイパスでいくか、それはユーザー次第である。どちらにも言い分がある。放電バイパスのメリットは1並列だけバランスを崩してもシャットダウンしない。(そのかわりそのセルを傷める可能性がある)

放電バイパスのもうひとつのメリットは安くて小さいBMSで済むことである。放電性能を無視できるので、許容充電電流が5Aもあれば充分である。

BMSの配線は

B-ポート(バッテリーパックのマイナスを繋げる)

C-ポート(充電ジャックのマイナスを繋げる)

P-ポート(出力側、アンチスパークスイッチやESCのマイナスを繋げる)

バランスリード線

以上があるが、中には充放電共通のコモンポート式のBMSもあり、この場合はP-またはC-のどちらか片方しかなく、出力側のマイナスと充電ジャックのマイナスの両方を同じポートに繋ぐ。

BMSのポートに繋ぐのは基本的にマイナス側のケーブルのみである。

以下にポートの配線図を載せているが、これは参考程度に留めてもらいたい。BMS購入時は必ずメーカーの配線図が付属するのでそれを良く確認しよう。

BMSは配線をひとつ間違えると、火花が出たり、BMSが一発で壊れたり、BMSが異様に発熱したり、かなり危険なので慎重に配線をしよう。

当HPではトラブルに関する一切の責任を負いません。

↑ これが一般的なBMSの配線図

↑ コモンポート。P-(またはC-)に充電ジャックのマイナスとともに出力側のマイナスも繋ぐ。

↑ 放電バイパス。バッテリーからの配線はプラスマイナスともに直接出力側に繋げる。コモンポートの場合、DCジャックのマイナスと繋ぐポートはP-(またはC-)

↑ FOCBOX unityならアンチスパークスイッチを介さず直接繋ぐことができる。これが地味に便利で省スペースである。プラスバージョンのFlipsky FSESCも同様でアンチスパークスイッチが不要。FSESCを買うならプラスバージョンだ。信頼性も高い。

↑ FOCBOX unity、およびプラスバージョンのFSESCの放電バイパス。バッテリーから直接プラスマイナスを繋ぐ。電源ボタンはFOCBOX unityに搭載されている。

BMSのバランス線

これは10s用のバランス線を繋いだ図であるが、バッテリーパックの並列グループとその隣の並列グループの間に一本ずつケーブルを割り込ませてBMSのコネクターに繋ぐ。下のB-から始まり、バッテリーパックのマイナス側から順番にB-・B1・B2・B3・・・・B9・B10と繋いでいく。合計で11ピン。

しかしBMSによっては、B-をB-ポートで兼ねている物もある。この場合はバランス線はB1から始まり10ピンになる。10sだから必ずしも11ピンとは限らない。12s用でも13ピンと12ピンのパターンがある。

↑ 緑の矢印の部分。B-とbattery1の間にもバランス線があるタイプ。これは12s用のBMSでもバランス線B0〜B12まで計13本。この緑の矢印が示す配線がB0と定義され、そこからプラスに向かって順番にB1→B12とされる。

↑ 同じく緑の矢印の部分。これはB-とbattery1の間にはバランス線が無い。この場合は12s用のBMSでバランス線も12本となり、B0は存在せずB1から始まる。

上記の2つのBMSはどちらもコモンポート式であり、充電(C-)と放電(P-)のポートがP-で兼用となっている。ゆえにC-が無い。

繰り返しになるが、BMS購入時に付属する配線図を必ず確認しよう

これも順番を間違えると火花が出たりBMSが異常に発熱したり、一発で壊れたりするので気をつけて配線をしよう。

↑ 少し手間ではあるがBMSにセンサーコネクターを挿す前に、必ず赤い矢印の間の銀色のピンにテスターを当てて各並列の電圧を測定する。すべて同じ電圧ならOK。大きくズレていたら、配線ミスやセルの破損、充電バランスの崩れなどがある。バッテリーを組む前に全部のセルの電圧を測定するのも基本中の基本。

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スポット溶接

https://youtu.be/KfuSercd7Y8

↑ 百聞は一見にしかず、これを見ればイメージをつかめるだろう。この映像はLifepo4(リン酸鉄リチウム)セルをスポット溶接している映像である。

1:07で行なっている複数の配線のハンダ付けがBMSのバランス線である。

使用するニッケルストリップ(溶接している銀色の板、テープ状のもの)は0.15mm厚がオススメ。0.2mmのほうが電流が流れやすいが、わずか0.05mmの差で極端に溶接がしづらくなる。体積が大きくなるので溶接の熱が放散されやすく、溶けにくくなるためである。

スポット溶接において大事なことは、とにかく溶接した後にニッケルを引っ張って確認である。ペリッと簡単に剥がれるようなら溶接機の設定を変更してやり直しだ。やり直しが困難なくらい確実に溶接しよう。走行中にニッケルが剥がれたら大問題になる。

↑ 強力な溶接なら赤◯部分の溶接一回分だけでもこれだけの接合力を得られる。セル1つ約50g × 6個 = 300gを保持。これで剥がれて落ちるようならダメだ。

スタック

stack・・積み重ねるという意味でバッテリーセルの積み重ねの数により、シングルスタック、ダブルスタックという表現をする。スケートボードの特性上、ダブルスタックが事実上の限界だろう。

↑ 1段積み、すなわちシングルスタック。10s4p。

↑ 2段積み、ダブルスタック12s6p。

↑ 2段積み、ダブルスタック12s8p。

↑ 当管理人による自作、ダブルスタックの変則配列12s10p。超大容量。BMSの配線はまだしていない段階。最終的には熱収縮パックをするのだが、左右半々、別にしてパックしている。万が一の隣同士の列の接触によるショートを避けるためである。1セル約50g × 120個 = 約6000g。バッテリーだけで約6kg!重すぎる!

ご覧の通りで、シングルスタックなら薄くて車高が低く軽いマシンを構築でき、ダブルスタックなら大容量でパワーのあるマシンを構築できるがそのぶん重くなりコストもかかる。車高も高くなり、大きめの97mm、107mm、110mmウィール、またはATタイヤ(オフロードっぽい大口径のタイヤ)あたりが必須となる。

俵積みと長方形積み

これはダブルスタックにおけるセルの重ね方だが、詳細はこちらのリンク先を参照。

その他

Checking and correcting voltage drift in a battery pack

↑ バッテリーのセルバランスが崩れた時の手動による修正方法。