モーター、ウィール、それらに動力を伝達する機構、ハンガーまで含めて大雑把にドライブと言っています。
今の主流は4つ
・ベルトドライブ
・ハブモーター
・ギヤドライブ
・ダイレクトドライブ
この4つです。それぞれに長所や短所があり、これが正解だとは言い切れません。しかし以下に記述する内容があなたがどのドライブを選択するかの一助になると思います。
ベルトドライブ
↑ boosted boardsのベルトドライブ。
ベルトドライブは電動スケートボードの黎明期から使われている定番の機構。モーター側とウィール側のギヤ比によって効率よくトルクを生み出す。小さめのモーターでもトルクを出せる、モーターの冷却性も良い。まれにベルトが切れる、ゆえに定期的なメンテナンスが必要、ベルトによるパワー伝達の損失が若干ある。フロント側と同じウィールを使えるので基本的には乗り心地が良い。大パワーにも対応できる。ギヤ比を変えてトルク特性を変更できる。(自作や一部のメーカーに限られるが)
自作だと組むのが少し面倒ではあるが、正直なところ動力面においてベルトドライブには目立つ欠点がない。
ハブモーター
↑ Raptor2.1のハブモーター
直接モーターにウレタンをかぶせて、直接回るウィールとする機構。わからない人が見ると一見どこにモーターがあるかわからない。このウレタン部分はメーカーによって交換できるタイプとモーターに固着して交換できないタイプがある。ほぼセンサー付き(FOC)で音が静か。ギヤ比を変更できないかわりにKV値でトルク特性を判断する。モーターに直接薄いウレタンをかぶせてあるだけなので基本的に乗り心地が悪い。モーターの冷却性が悪く、大口径ウィール、大パワーほど厳しい。とくに大パワーだと熱問題の解決が難しく、ハイエンドなモデルには使われていないのが現状であり、登場時はセンセーショナルであったが、近年では少し評価が厳しいドライブ。しかしエントリーモデルでは低コスト。中華製の安いボードは大半がこのハブモーターである。基本的にメンテナンスフリーで自作もしやすい利点もある。
ギヤドライブ
↑ 3D Servisasのギヤドライブ
ギヤドライブを採用しているメーカーは少ない。Jed board、ARC board、Trampa、あとは上の画像にある自作用パーツであるが、この3D ServisasのギヤドライブはBio boardsに採用されている。ギヤドライブは通常のウィールが使えるので乗り心地が良い、ギヤ比を変更できる。フリーロール(スロットルを離していても勢いで転がり続ける惰走性能)がよい。モーターの冷却性も良い。ハイパワー、ハイエンドマシンにも使えるなど、動力面に関してはほとんど欠点がない。欠点を上げるなら、定期的なメンテナンス、少しだけうるさい音、バックラッシュ(ギヤ同士の隙間)の調整がシビアである、モーターのシャフトを少し切らなければならないなど、少しマニアックな面がある。管理人としてはハイパワーマシンで走りを重視するならばけっこうオススメのドライブ。
モータープレート、ギヤボックス自体もモーターの放熱を兼ねるので他のドライブよりも熱に強い。組んだ時は回転が固いと思っても、しばらく走らせると慣らされて回転が軽くなるという初心者泣かせな特徴がある。
2020年以降の3D ServisasのV4・V5ギヤドライブはモーター位置が完全に固定でバックラッシュ調整ができないようになっている。
ダイレクトドライブ
↑ Torque boardsのダイレクトドライブ
アクスルシャフトをモーター軸として回す点はハブモーターと同じだが、モーターとウィールは画像のように明確に分かれている。元はCarvonというアメリカのメーカーが提唱したものだが、右往左往しているうちに今では他のメーカーが採用する流れになってしまった。まだあまり実績と採用例が少ない比較的新しいタイプのドライブ。2022年においてはダイレクトドライブに対する大方の評価が定まった。
通常のウィールをそのまま使うので、ウレタンが薄いハブモーターに比べて乗り心地はよい。しかしモーターがこのように露出していて地面との隙間が少ないのでモーターが小石等にぶつかる可能性がある。この隙間を稼ぐために大きいウィールしか使えない、するとトルクが食われる、ブレーキが甘くなるなどの欠点もある。この欠点ゆえ、使用できるウィールサイズのスイートスポットがかなり狭い。このような欠点から2022年においてはベルトドライブやギヤドライブに軍配が上がっており、新規でダイレクトドライブが開発される流れはほぼ止まってしまった。しかし、滑らかなモーターの回転、良い乗り心地と、管理人はけっこう気に入ってるドライブ。ハブモーターほどではないが、比較的熱を持つ。
↑ なお、トルクボードのダイレクトドライブ110mmはモーターと地面とのクリアランスは20mm。そこそこ綺麗な路面のアスファルトなら大きな問題はない。
ウィール
ウレタンウィールにおいては直径83mmから107mm、しいては110mm、111mm、120mm、そしてAT(オフロードタイヤ)まで、ウィールの選択肢は非常に多い。近年ではストリートウィールでは大きめのウィールが流行り始めている。定番となっている。乗り心地が良く、段差なども越えやすいからである。しかし、小径ウィールと比較して電費が落ちたり、上り坂や加速力、ブレーキ力が落ちるという欠点もある。ウィール径が大きいとパワーを食われてしまうのだ。ゆえに大きいウィールは大パワー・大容量バッテリー向けとも言える。
ATタイヤに関しては逆に小径が流行り始めている。従来は7インチ(直径175mm)がスタンダードだったが、最近では6インチ(直径150mm)も人気が出始めている。
ATタイヤも一時期は小径6インチが流行っていたが、時代の流れと共にバッテリーも大容量化され、2022年現在においては、7インチ、8インチが定番となりつつある。
人によってはオフロード主体で走らないけど、石畳やら舗装が悪いアスファルト、フラットダート程度は一時的に通過できる程度の走破性が欲しい、ついでに乗り心地良くしたい。そしてレンジをあまり落としたくない。そういう人々が6インチを使う傾向のようだ。EvolveもGTRのデビューに合わせて6インチタイヤをデビューさせている。
電動マウンテンボードは8インチが主流。それに類する大容量バッテリー搭載ATにおいては7インチか8インチという感じである。
↑ 左がHaggy boardのベルグマイスターホイールと6インチタイヤ(147mm)、右がEvolveの7インチタイヤ(175mm)
好みやバッテリー容量に合わせて決めると良いだろう。ハブモーターやダイレクトドライブではウィールの選択肢が少ない。選択肢の幅が広いのはベルトドライブだろう。メーカーは・・
・abec11
・オランガタン (ORANGATANG)
この2つが二大流派でもっとも使われている。そして・・
・MBS
さらには中華製のabec11クローンもある。
2020年ではCloud Wheelも躍進し始めた。
ウィールには中心のコアと呼ばれる部分に、プーリーにはめ込むための穴が複数空いており、これの形状がabec11とオランガタンのどちらかによって形状がまったく異なるのだ。
↑ abec11。扇型の穴が6個空いている。
↑ abec11クローン。扇型の穴は一見同じように見えるが、本家とはびみょ〜〜〜に違うのがお分かりいただけるだろうか?
↑ オランガタン 。丸い穴が10個。オランガタンはメーカー名だが、このタイプを「ケーゲルコア」と言うパターンが多い。ケーゲルという名前のウィールから採用されたコアだからだ。
↑ abec11用のプーリー。しかし、クローンなどには合わないパターンがある。逆にクローンに合ったプーリーもある。
↑ これはExway X1 Pro riotの付属プーリー。「今日利用可能な最も人気のあるホイール」とはまさにabec11とオランガタンのことである。
基本的にはabec11、オランガタンの二大流派のどちらかを使うことになるだろう。iPhoneとAndroid、WindowsとMacみたいな感じだ。
Boa wheelやTorque boardsの110mmはオランガタンコアであり、MBSやスリックレボリューションはabec11コアである。また、クラウドウィールに関しては初期の黒いコアはABEC11、後期の色違いのコアはクローンに変更された。後期はクラウドウィール・ディスカバリーという名称である。
abec11に関してはプーリーとの互換性に問題を抱えている。abec11用のプーリーなら何でもいいというわけではなく、ウィールサイズやクローンによって微妙に穴の形が違うのだ。自作をしている時に意外にもつまずくポイントのひとつである。
モーター
バッテリー、ESC、そしてモーター。ボードのパワーを決定づける三大要素。どれかがひとつ劣ってもダメであり、全てが同じ次元で対応することによりハイパワーボードは完成する。
モーターを決める時に気にするのは、KV値、対応アンペア、対応電圧、最大ワット数だ。細かく言えば、モーターシャフトの太さや長さも気になるだろう。モーターによっては、モーターコネクタが5.5mmだったり、4mmだったりするだろう。センサー付きかセンサー無しか、これも非常に重要だ。
↑ これはTorque boardsの6374モーターのスペック。ワット数3150W、最大アンペア80A、最大電圧は12sまで対応、モーターのシャフトの太さは8mm、ケーブルは12AWG、コネクタは5.5mmバレットコネクタ、センサー付きでJST-zh6ピンであるということがわかる。どれも大事な情報だ。なおコネクタやケーブルに関しては自作用データベース(電気系統編) を参考にしてほしい。
なお、モーターの呼称である6355やら6374、5055といった数字はモーターの大きさを表している。前半2桁が直径、後半2桁が長さである。例えば6374なら直径63mm、長さが74mmである。今の風潮で見れば、6355がミドル〜ハイ、6374がハイエンドといった感じだ。6380(4000W!)というものすごく強力なモーターも存在する。市販の完成車ではパワーがあると言われるevolveのモーターが5065、ひとつで約1500Wなので、63xxモーターがいかにハイパワーであるかわかるだろう。
KV値
モーターが一分間で1Vあたり何回転するかを表す。10sで190KVなら
36V(10s定格) × 190 = 6840 rpm
ただし、同じワット数でKV値が違う場合、KV値が小さいほうがトルクがあり、KV値が大きいほうが高回転型となる。
ベルトドライブ、ギヤドライブ で使われるアウトランナーモーター(前述の63xxモーターなど、モーター缶が回るタイプ)ではおおよそ170〜270KV
ハブモーターやダイレクトドライブではおおよそ60〜90KVである。
ハブモーターやダイレクトドライブはKV値でほぼ特性が決まってしまうが、アウトランナーモーターではギヤ比を変更する事である程度出力特性を変えることができる。
さらに言えばどのドライブもウィール口径でも出力特性を変えることができる。(ハブモーターではあまり口径を変えられないが・・・)
小さいウィールほどトルク型、大きいウィールほど最高速型だ。しかしハブモーター・ダイレクトドライブは極端にウィールの大きさを変えることができない。ウィール口径に関してはベルトドライブが一番融通が利くだろう。実際にevolveは83mm〜107mmまで対応できる。
ハブモーター、ダイレクトドライブの購入時にはアウトランナーモーター以上にKV値に気をつける必要がある。KV値が大きいほど最高速は伸びるが、そのぶんトルクが少ない。トルクが少ないというのは逆回転側のバックトルクも少ないということ、つまりブレーキも弱くなる傾向があるということだ。
モーター極数
モーター外側のS・N・S・・・の磁石の並びの数のこと。これはVESCアプリで速度を割り出す時に使われる数字であり、アプリ上では設定画面に「Motor poles」などと表記されている。上の画像の場合は14極。
ハブモーター、ダイレクトドライブはだいたい20極、または28極。
63xxなどのアウトランナーモーターはだいたい14極である。
VESCアプリを設定する時にお使いのモーターに合わせてMotor polesの欄にこの数値を入力しよう。
モーターの極数に付随して、VESCを使っていると「erpm」という単語がたびたびでてくる。これはVESCがモーターに送る一分間あたりの電気的な回転数。SとNのペアで1erpm、14極のアウトランナーモーターなら7erpmでモーター1回転、28極のハブモーターなら14erpmでモーター1回転である。
VESC4ではerpmが60,000を越えると不具合が出やすくなるという話もある。これは高KVのモーターほど60,000erpmに近づきやすいという事であり、高KVの高回転型モーターほど速いか?と問われればこの問題が出てくるのである。
しかしVESC4ベースのFOCBOX Unityは100,000回転まで問題ないとも言われており、Trampaで販売しているVESC6は150,000回転まで大丈夫だと言う。VESCを販売しているメーカーごとにそれぞれ主張がある。
190KV × 50V(12s) × アウトランナーモーター1回転7erpm = 66,500erpm
190KVモーター、12sバッテリーで限界まで回すとVESC4では不具合発生率が高まる領域に突入してしまう。
170KV × 50V(12s) × アウトランナーモーター1回転7erpm = 59,500erpm
12sでは170KVモーターが無難であるという計算になる。しかし実際は人の体重や空気抵抗などでキッチリ理論値上限まで回ることはない。また最新のVESCならそこまで問題はないだろう。
BLDC・FOC
モーターの制御方式。ざっくりといえばモーターにJSTの6ピンまたは5ピンのコネクタが付いてくればFOC、3本のケーブルのみならばBLDCである。FOCはセンサー付き(センサード)、BODCはセンサー無し(センサーレス)などと言われている。
基本的にハブモーターはほとんどセンサー付きのFOC。センサーレスの存在はアウトランナーモーターの場合だけと考えても良い。いまの主流はセンサー付き。
↑ Maytechの6374センサーレスBLDCモーター
↑ 同じMaytech6374モーターだが、こちらはセンサー付き。つまりFOC。赤円のコネクタがセンサーコネクタ。VESCやFOCBOX Unityの6ピンコネクタに挿す。センサーコネクタを使わなければBLDCとしても使用できる。
違いはBLDCは矩形波制御、FOCは正弦波制御である。この違いによりBLDCは回転が少しがさつであり、FOCは静かで滑らかに回転する。波形のピークが矩形波の方が多いので、最高速はわずかにBLDCが勝るが、トルクではFOCが勝る。VESCでは出だしをFOC、速度が上がってきたらBLDCに切り替えるという制御をしている。その切り替わりの閾値(回転数)をユーザーが任意で設定できる。
2020年の電動スケボーシーンにおいてはほぼFOCが使われているのが現状である。当HP管理人はBLDCモーター(センサーレス)を使ったことがありません。