ベルトドライブ考察

AE board AE2のベルトドライブ化やEvolve用のプーリー自作など、最近はベルトドライブに焦点を絞っていじってきたが、その過程で分かったことを書く。

ベルトの歯数 × 5mm = ベルト長

これはHTD5の場合。5mmピッチなのでこうなる。HTD3の場合は歯数× 3mm。ベルト長はベルト外周を定規に当てて、グルリと定規の上でベルトを転がすように一周させるとわかる。ピッタリ一周したところがベルト長。5mmピッチなら、ベルト長を5で割ればベルトの歯数もわかる。

歯が大きい5mmの方が噛み合いの確実性において有利であり、3mmはベルトの張りが甘いとプーリーとベルトが滑りやすい(歯飛びしやすい)傾向がある。また3mmは歯の山も小さいゆえ摩耗にも弱い。Evolveやトルクボードは5mm、Boostedは3mm。

ウィールは乗り心地、口径、幅などを数値化されたデータを参考にしてユーザーは選定するが、数値に表れない回転の精度がかなり重要。ブレることなくキレイに回るウィールが良い。高速回転して止まって見えるコマのようなイメージが理想。中華ウィールはこの回転の精度においてまだ工作精度が甘くブレる傾向がある。回転の精度が悪いと走行安定性に欠けたり、ボードに無駄な振動が常時伝わり電子部品に負担をかける。ベアリングが無駄に摩耗したり、ドライブプーリーやベルトにも負担が掛かる。良いことは何もない。これはリモコンで空回しさせればなんとなくわかるだろう。

一部の格安中華ベルトドライブやトルクボードはウィールとプーリーをボルトで固定する。Evolveやboosted、その他はウィールにプーリーを差し込み、固定自体はアクスルシャフトのナットの締め込みに委ねる。差し込むタイプはプーリーにもベアリングがあり、プーリー自体が回転軸を中心に保つ設計となっている。プーリーの回転軸の精度はベアリング付の差し込み型のほうがおそらく良いだろう。ボルトによるウィールとプーリー固定タイプは、回転軸の精度はウィールに全てかかっている。ベルトをつけていない状態でアクスルシャフトに差して手で空回しさせると目視で精度がわかる。ウィールがブレるとプーリーもブレる。ここでも回転精度が良いウィールを使うことの重要性がわかる。

ベルトドライブ自体に、モーター位置をズラして自力でベルトの張りを調整できるタイプ、モーターの位置が完全に固定で調整できないタイプ、モータープレートに内蔵されたバネによるオートテンショナー機能付きなどがあるが、選ぶなら自分で調整できてなおかつHTD5のベルトドライブがベター。

いくつかのベルトを使ってきたが、Evolveで採用しているGates社のパワーグリップGT3(第3世代)ベルトが音も静かで上質。HTD5のプーリーに問題なく使える。Gates社のベルトはミスミで販売しているが、個人販売では利用できないという欠点がある。仕方ないので個人事業主の知り合いに購入の代理をお願いする。Evolveから買うよりははるかに安い。

アリエクスプレスでもHTD5のベルトはいくらでも売っている。購入時は長さと幅に気をつけよう。9mm、10mm、15mm幅あたりが主流だろう。Evolveは15mm。

ベルトドライブは音がうるさいという人がいるがこれは誤解である。誤解の原因はコンプリートのベルトドライブ電動スケボーにおいて、センサーレスモーターが使用されているケースが多いためと思われる。またセンサードモーター(FOC)を使用してもESCの制御次第ではやはり音が大きめ。VESC、センサードモーター、品質の良いベルト、この組み合わせでハブモーター並みに音は小さくなる。ベルトドライブゆえに音が大きいというわけではなく、各パーツによるところが音の要因として大きい。ハブモーターはほとんどFOC(センサードモーター)なので基本的に静か。Boostedはセンサーレスで音が大きめ。

ベルトドライブはプーリー歯数全体の約半分の歯でベルトと噛み合い、ギヤドライブは動力伝達におけるギヤ同士の接触部分が点に近い。ゆえに負荷が分散されるベルトドライブは3Dプリンターでプーリーを作るのに適している。電動スケボーにおける4大ドライブにおいて、3Dプリンターと最も相性が良いのはベルトドライブでありカスタム性が高い。

ギヤ比変更で大きく歯数を変えるならベルトも長さを相応に変えなければならない。HTD5なら、プーリーの歯数が2T変わると通常はベルトの長さも5mmプラスα(5mmピッチ×2T÷2(ベルト周回の上下)、さらにモーター軸とドライブ軸の間のベルトの角度分がプラスα)、変えなければならない。モーターの位置をズラして調整するにも限度がある。モータープレートに空いているモーター固定穴の調整幅にもよるが、せいぜい差分2T、頑張って差分4Tが限度。差分6T以上ならベルト長の変更はほぼ必須。

こちらに最適なベルトの長さを決めるための計算法があります。

ベルトの張りすぎはご法度。ドライブやモーターに負担が掛かるしアクセルオフの転がりにも影響が出てくる。つまりベルトの張りすぎは負荷でモーターが発熱しやすくなるし電費も落ちる。HTD5mmなら多少はベルトの張りが緩めでも問題はない。歯が大きいからプーリー歯に引っかかりやすい。

以上からベルトドライブはもっともカスタム性が高いドライブであるものの、かなりマニアックでもあり弄り始めると敷居が高い。組み立てや分解も面倒である。初心者が使いやすいのはポン付けでデッキに組み込めるハブモーターやダイレクトドライブである。