VESCでは出力をユーザーの任意に設定できる。これが市販の完成品ボードとの最大の違いであるが、任意というか設定が自由すぎてどうしたら良いかわからないというケースも多々ある。
バッテリーが強力ならば、モーターが強力ならば、ドライブが頑丈ならば、かなり強めの設定も可能である反面、逆にジョボければ控えめな設定にせざるを得ない。
バッテリーの総出力を知るには多少の知識が必要だ。どんなセルを使っているか?並列数は?ケーブルやコネクタの規格など。
サムスン30Q10s5pなら、30Q1個で定格15Aの出力、それが5p(5並列)なら最大75A。しかしコネクタがXT60ならば60Aというのが基本的な考え方。
しかしながら30Qの定格は15Aとしながらも実際には20Aも一時的には出力できると言われているし、XT60コネクタも短時間なら80Aに耐えると言われている。しかしこれは余力と見做すのが無難だろう。
30Q10s5pはこのとおりけっこう強力なバッテリー。次にモーターの定格出力はどうか?
↑ Bioboardsの6396モーター。定格出力はなんと4500W。まず使うことがない出力。
↑ Koowheel 2ndGenのモーターは350W。Bioboardsの6396モーターと比較すると13倍近い差がある。
サムスン30Q10s5pが 75A × 定格36V(10s)で大雑把に2700Wを出力できると考えると、Bioboardsの6396モーターはめちゃくちゃ余裕がある(デュアルなら9000W)。一方でKoowheel 2ndGenのモーターはデュアルでも700Wである。
つまりBioboardsの6396モーターを使うならば、Battery Current MAXをサムスン30Q10s5pの上限である75Aまで使える。「75Aなんて恐ろしくて使えないよ」というのであれば40A、30Aとユーザーの好みに合わせて下げることが可能だ。モーターが強力ならそういう設定の自由がある。
Koowheel 2ndGenのモーターならばどうか?350W ÷ 36V = 9.72A
理屈だけで言えばモーターひとつあたりおおよそ10A、デュアルでも20A、つまり総出力電流20A。かなり控えめだ。この基準で考えるならばVESCでのMotor Current MAXは10A設定になる。Koowheel 2ndGenがマイルドだと言われていたのはこの定格出力に起因するのだろう。逆にいえば初心者には優しいボードとも言える。
ここまでが基本的な考え方。
強力なモーターならばそんなに深く考えずに自分に合わせた設定ができることはわかった。ジョボいモーターなら控えめな設定にしないとならないこともわかった。
しかしジョボいモーターでもPCのオーバークロックのように、モーターの定格以上のアンペア設定が出来ないわけではないのだ。これがVESCの面白さである。
ではどうするか?モーターの温度を探りながら少しずつ数値を上げていくのだ。
↑ 前回のEXOで最高速を出したときの設定。EXOのダイレクトドライブは前述のKoowheel 2ndGenのモーターをベースにしている。この設定ではモーター20A(デュアルで40A)、バッテリーの最大アンペアは25Aだ。
残念ながらこのモーターは温度センサーが作動していないのか、正確な温度はわからなかった。なので手でモーターを触りながら数値を上げる。ちなみに上記の設定ではモーターはかなりヌルい感触だった。
↑ ここまで上げた。バッテリー出力30A、モーターも30A(デュアルで60A)。
「おいおい、1000W越えとるやんけ(36V × 30A) 。Koowheel 2ndGenのモーターはデュアルで定格700Wだろ?」
しかし実際には意外にも耐える。加速も鋭くなり、かなりエキサイティングなボードになった。そのかわりモーターはそこそこ熱くなる。温度が計測できれば一番良いが今回はそれができない。手で触って「そんなに熱くないやん」という感覚である。これが「うお!あっちぃ〜〜!」となるとヤバイですよ、と。
今回のケースに関してはベースはハブモーターでも、それをダイレクトドライブにした物なので少し放熱性が良くなっているのかもしれない。
また、最高速を長距離にわたってキープしたり坂を上ったりと負荷を掛ければもっと熱くなるのかもしれない。もしそうなったらまた数値を下げる。このように探りを入れながら数値を上げることでモーターの定格以上のパワーを引き出すことも不可能ではないのだ。(もちろん自己責任で)
最後に、大きめのウィールに変えると(ダイレクトドライブやハブモーター)モーター熱が上昇する。これもまた負荷が掛かるからだ。