プレオーダーの闇 その2

その1ではおおまかに、日本との商習慣との違い、プレオーダーとは資金集めの意味合いが強い、不具合発覚やら取引先とのトラブルからの発送遅延が横行しているという内容を書いた。

基本的にプレオーダーというのは新製品に対して行うので、どうしても予想外の不具合が出るだろう。何年も売っている不具合の出尽くした定番の商品とは違う。部品の発注にも海外(中国など)と取引する際にトラブルを起こすこともあるだろう。企業側が思い描いた予定通りにすべての事が進まず、結果的に完成や発送が遅延するというのはわかる。

それでも新製品を早く手に入れたい。早く試してみたい。こういう人は一定数いる。私もその1人だ。カッコいい表現をすると、これはイノベーター理論で言うところの「アーリーアダプター」というカテゴリーに入る人種である。

↑ イノベーター理論。消費者が新製品を受け入れるのには5段階の流れがあるという。後述するが電動スケボーにおけるアーリーアダプターはあまり報われない。

企業側もこのアーリーアダプターを積極的に利用する。インスタグラムやツイッター、ユーチューブなどでフォロワーの多い人には優先的に製品を送り、宣伝させる。彼らはまだ正式に発売されていない製品の宣伝をする。おそらく最終プロトや生産品の第1ロットなどだろう。この手の人たちはまた少し特殊な立ち位置だ。企業側もこうして買え買えと煽る。

事が順調に進めば、アーリーアダプターは売り上げ増大に大きく貢献する。「これは凄い製品だ、おススメだ」と勝手に宣伝してくれる。問題は順調に進まなかった場合や製品自体がダメだった場合。アーリーアダプターは不満を拡散する危険因子に早変わり。

いままでその辺りの流れを見ていると、炎上するというほどでもなく、ダメな製品に対して興味が失せて忘れ去られる感じだ。

プレオーダーに飛びつく人種は必ず一定数いる。良い製品か、悪い製品か、不具合が潜在的に潜んでいるのか、よくわからないのに飛びつくのはリスクがある。過去の経験上、わたしも散々プレオーダーに飛びついたが結論から言うと「電動スケボーにおいては大したメリットはない」日本のネットで古くから言われる人柱そのものである。

アーリーアダプター = 人柱

クラウドファンディングの件でも書いたが、新製品や新しいアイデアというのはなかなか定着までが難しく、その過程は困難極まりない。彼らはアーリーアダプターよりも更に前の段階であるイノベーターという人種。新しいアイデアを生み出し世に出す存在だ。この人たちが一番リスクを負っている。

アーリーアダプターのリスクなど可愛いものだと思うが、やはり金を払っている以上商品が来ないとか、製品自体に問題が起これば不満も出るだろう。

プレオーダーに飛びつくアーリーアダプターには大してメリットがない、と書いた。電動スケボーの話のうえでいくつか理由を書く。

まず不具合が出た場合は時間と金の無駄になる。これがバカにならない。散々待たされた挙句に不具合があると言われた時の損失は計り知れないのだ。

逆に不具合がなかった場合はそのまま順次第2ロット、第3ロットと増産されるのでそれを買えばいい。大抵の場合は改良も加えられている。製品に問題なければはじめのロット分の出荷からそんなに時間差もない。

遅延した場合、これが最悪である。この世界は後からドンドンと新型が出てくる。遅延して出荷されない製品より、後発の他メーカーの新型のほうがよっぽど性能が良く、供給も安定しているというパターンが多い。

以上の情報はesk8buildersやredditあたりにすぐに出てくる。

つまり製品に問題がなく、即日出荷が可能である製品だと判断してから買えばいいのだ。電動スケボーに関しては購入を焦ったり急いだりしても見合ったメリットはあまりないのだ。

嫌な思いをしたくなければアーリーマジョリティというさらに次の段階で買いましょう、ということだ。アーリーアダプターが太鼓判を押した製品で、なおかつポチった翌日に発送される状況で買うのが手堅い。これがアーリーマジョリティ。

イノベーター理論を引用して話を進めたが、電動スケボーに関して言うとアーリーアダプターのリスクはかなり大きいと言える。不具合だけでなく、発送の遅延、他社からのさらに高性能な新製品の登場など、デメリットに見合うメリットがかなり少ないジャンルだ。電動スケボーにおいてはアーリーマジョリティがどう見ても精神衛生上、悪くない立ち位置だ。

電動スケボーという特性上、アーリーアダプターは怪我のリスクも負う。走行中に不具合が出れば転倒する可能性もあるのだ。やはり不具合が出尽くして改良された製品を後から買うのが安心安全である。

そしてこの世界の怖いところは、即時出荷されない製品も普通にポチれて決済されてしまうことである。

「サイトに載っていてポチれるし、どうせ少し待てば出荷されるでしょ」

こんな気軽な思い込みが、下手すると半年、1年待たされるという恐ろしい業界である。これは資金集めのための「隠れ(騙しの)プレオーダー」といった感じでタチが悪い。

電動スケボーにおいてアーリーアダプターが手痛い仕打ちを受けた話には枚挙にいとまがない。現在進行系で未だに存在する。

ここまで読むと「プレオーダーって、ロクなことないじゃん!」と思われるだろう。日本人の感覚で、期日通りに、不具合のない、期待通りの製品が手元に来ると思ったら大間違いである。この世界のアーリーアダプターはほとんどベータテスターみたいな扱いだ。

しかし、彼らのお陰で色んな情報がフィードバックされて改良され、より良い製品が生まれるのだ。進化の促進において必要不可欠な存在でもある。

以上を踏まえて、電動スケボーや関連製品を買うときは注意が必要である。プレオーダーに飛びつくのも自由。しかし結構なリスクを負うことを知っておいてもらいたい。

プレオーダーなんてロクなことねえよ!と散々書き散らしたあとで言うのもアレだが、しっかり期日通りに出荷してくれる企業もいちおう存在します。念のため。

次回は電動スケボーの手堅いチョイスとは?を考察する。