なぜカーボンデッキはイマイチ流行らないのか?

電動スケボーのデッキはカナディアンメープルを7〜9層に重ねてプレスしたデッキ、もしくはバンブー(竹)、またはそれにグラスファイバーをサンドイッチしたデッキが主流である。カーボンデッキはどちらかと言えば少数派。

↑ 今は亡きenertion ラプター1はカーボンデッキだった。それがラプター2からウッドデッキに変わっている。

ラプター2はデッキとエンクロージャーを別体パーツとし、ネジを外すことで分離できる。そして他社のデッキにエンクロージャーを取り付けることができる。当時enertionのジェイソン氏が話していたことだが、「デッキは各人の好みがあるので容易に交換できるようにした。」

ラプター2は電動ドリルでデッキに穴を開けるなどの手間はかかるものの、他のロングボードデッキにバッテリーやメカ、ドライブを移植して電動化できたのだ。私にとってもこれが電動スケボーにおけるDIYの始まりでもあった。

電動スケボーに数台乗るとわかるが、デッキが自分の好みに合わないと「終わる」。イマイチしっくりこないデッキと付き合う羽目になる。1台目、2台目はこんなものかと何となく乗るが、3台、4台と乗るにつれて自分の好みやスタイルがわかってくる。

私はラプター2のキックテール付きの標準デッキが嫌いだった。キックテールがつくデッキは必ず車高が高くなる。ラプター2は重く、キックテールも使いづらい。ホイールベースも短くなりせっかくのパワーも使いにくい。速攻でデッキをランドヤッツEvoに変えた。

↑ ラプター2のバッテリー、旧FOCBOX、ドライブをランドヤッツEvoデッキに移植したボード。これが1年間私の主力機となった。97mmウィールに換装し最高速50km/hオーバーという当時の市販ボードの中では群を抜いた性能だった。

木のデッキはこういうことができる。カーボンデッキではむずかしい。enertionのジェイソン氏が下した結論である。

カーボンデッキはユニボディという形式が主流であり、それはバッテリーを搭載するスペースを内包したエンクロージャーを兼ねた一体型デザインである。これはバッテリー容量が制限される。バッテリー増量はほぼ無理である。

それにカーボンデッキはコストもかかる。カスタムもしにくい。

↑ ARC Aileron

↑ Backfire G3 Plus

ユニボディではない板材のカーボンデッキのボードもあり、上記の2つがそれである。少し価格が高めであり、販売面も微妙ではないだろうか?どうにもメジャーにはなりきれない。

こんな感じでカーボンデッキはコストがかかり高価格になりがち、カスタムにおける応用が効きにくい、加工しにくい、ユニボディはさらにコストがかかるうえにバッテリー容量も制限されて、なおかつ乗り心地も堅め。電動スケボーにおいてはどうにも使いにくい素材という地位になってしまっている。

利点は多少の軽さ。あとは審美性くらいだろう。軽さと言えども前回の投稿の通りで、デッキ自体の軽さにおけるメリットは低い。メープルからカーボンにデッキを変えて500g〜800g程度軽くなるというなら食事を1食抜く程度でトントン。ダイエットで2〜3kg身を軽くするだけで総重量はカーボンのメリット以上の軽さになる。

電動スケボーでは車のカーボンモノコックボディみたいに数10キロ〜100キロという、総重量に対して大幅な割合の軽量化は無理である。そしてオーリーなどをする普通のスケボーに軽さを求めるのとはまた違う。

審美性に関しては完成品メーカーがしっかり全体をデザインすれば見た目が良くなる。しかしこれはカスタムなどしない前提だ。

数年前は「カーボンデッキかっこええ〜」という物珍しさや関心も、今では上記の事実の前に少し影を潜めてしまった。

↑ Metroboard X。カーボンユニボディデッキ、$2500オーバー、VESC搭載のすごいやつ。バッテリー容量は576Wh。私のような変人だと少し物足りない。

このようにカーボンデッキはまったく無いわけでもなく、しかしメジャーというわけでもなく、カーボンの見た目が好き、プレミアム感を抱く人がメイン購買層であると推測する。今回の投稿のように合理性や理屈だけで考えるとイマイチ購入動機には至らない感じだ。

Evolve GTRにもカーボンとバンブーがあるが、私ならバンブーを選ぶだろう。モーターやらバッテリー、ESCなど電動の部分はまったく同じなのにバンブーのほうが安いからだ。

おそらくカーボンデッキは今後もメジャーにはならず、しかし消えもせずという立ち位置のままだと思う。