36V インバーター

電動スケボーと少し離れた話題になるが、まったく無関係でもない今回のお題。

オフグリッド、キャンピングカーなどで使われる製品にDCACインバーターという物がある。直流を交流に変換して家電を使えるようにするためのものである。

キャンピングカーなどでは、車に搭載されているDC12Vバッテリーから余剰の電力(走行充電の余り)をサブバッテリーに蓄電し、そのサブバッテリーのDC12VをインバーターによってAC100Vに変換し車内でAC100Vの家電が使えるようになる。

ゆえにこの手のインバーターというのはDC12V対応の種類が多く、次いでトラック等のDC24V対応の種類が多い。それ以外では48Vという物がある。

48Vは欧州における車の新規格バッテリー。従来の12Vではハイブリッドカーの足しにもならんという電圧規格を48Vにすることで、マイルドハイブリッドで使える電圧にするとともに他の電装品(電動ターボなど)にも応用できるそうだ。欧州の48V規格に関してはググるとたくさん話が出てくる。

そしてお題の36Vインバーター。ネットで探してもなかなか出てこない。かなり珍しい製品のようだ。

ここに日本で検索できるものがある。

リンク先の通りでとにかく珍しいDC36V入力のインバーター。

そこでようやく電動スケボーと話がつながる。36V定格といえばリチウムイオンの10直列。電動スケボーにおける定番の電圧だ。

↑ AliExpressにいちおうあるんですね〜、36V仕様。これは1000W。

↑ 仕様がまた素晴らしいんですね〜。36V × 33A = 1188W。低電圧時の30V × 33Aで990W。おおよそ1000W。過電圧48Vにはまずならないので、注目すべきは低電圧アラーム31.5Vと低電圧停止30.0V。リチウムイオン10直列にピッタリと適合していて、この仕様がそのまま過放電保護になるんですね〜。

あとは自作としては、単純にバッテリーケーブルから分岐させてアンチスパーク機能付きXT90-Sコネクタに出力。そこからインバーターに繋げれば電動スケボーのバッテリーからAC100Vの家電を使えます、と。

↑ 緑のラインが入っているのがアンチスパーク機能付きXT90コネクタ。頻繁に抜き差しをするならこれが良い。バッテリー側にメス、インバーターにはオス。これが鉄則だ。

10直列で1000Wを出力できる電動スケボーは、そもそもあるのか?

Evolve GTR、Ownboard GT&AT、中国各社のATボードの10s4p。これらは1セル8Aマックス、4並列で32Aマックス。上記のインバーターの規格ギリギリだ。1000Wを越える家電でなければ、とりあえずどうにかなるかも?というレベルだ。もしやるならバッテリーセルの負担も考慮して500〜600W程度にとどめるべきだろう。

家電のワット数は谷があり、スマホ、ノートPC、電気毛布など低出力のものもあるが、高出力なものではホットプレート、ドライヤー、電気ケトルなどがある。これらは軒並み1000Wオーバーだ。屋外で使える500W級の家電というのは案外少ない。求められるワット数は小さいか、大きいか、どちらか極端になる傾向がある。

上記に挙げた1000W級家電の特徴はいずれもかなりの熱を出す家電だということだ。お湯を沸かすならガスのほうが良い。イワタニやジェットボイルのような製品だ。アウトドアにおいて、電気でお湯を沸かすのは効率の点でオススメしかねる。アウトドアやら被災時に限られた貴重な電気を湯沸かしに使うのはあまり賢い選択ではない。

ノートPCや電気毛布程度なら問題なく使える。500Whのバッテリーで電気毛布50Wなら単純計算で10時間。リチウムイオンは時間率をほぼ無視できるので、DCACの変換効率を差し引いて大雑把に9時間というところか。

10s8pとか自作できればさらに使える時間や家電の種類は増える。

↑ 3000Wインバーターもある。

↑ 低電圧保護30V、過電圧保護48Vの仕様は先ほどの1000Wインバーターと同じ。違いは最大出力だ。100Aまで対応。電動スケボーでこのインバーターを使いこなすなら自作の領域だ。市販の電動スケボーで100Aに耐えられる物はない。もし自作できるならば電子レンジを使えるレベルになる。

上の表、36V仕様の右隣、48V仕様を見るとわかるが、48V用なら最大75A。同じワット数を出力するならば、高電圧ほど電流は少なくて済む。100Aと75Aではケーブルの太さがワンサイズは変わる。高電圧のほうが効率は良い。

ともあれ、10直列バッテリーの電動スケボーでもオフグリッドの電源になり得るということだ。こういうのもなかなか面白い遊びになるだろう。