Esk8NewsにEnertionの歴史を振り返る記事が掲載された。
電動スケボーを自作する者にとって、Enertionの存在は避けて通れないほど大きいものだった。その長いような短いような歴史がついに終わる。
これは昨年2019.7月に私が投稿したものだが、完成品のボードを製造、販売する難しさを今回の件で改めて思い知る。
完成品電動スケボー販売の難しさに関して、私なりの考察を箇条書きにする。
①すべての部品を1社で設計するのは難しい。
デッキデザインからESC、ドライブ、バッテリー製造まで、これらをすべて一社で賄うのは大変だ。不具合が出ようものならその責任も自社で負う。厳密に言えば部品を作るのは下請の工場ではあるが、その管理は自社である。そして部品ひとつ不具合が出れば完成品は成り立たず。
②やたら業界の進歩が早い
かつては賛美されていたハブモーター、今や乗り心地の悪いローパワー、低価格の定番製品に成り下がる。ギヤドライブ、平歯車からの脱却、ヘリカルギヤやヘリンボーンギヤドライブの登場。バッテリー容量、年々うなぎのぼり。ウィールもどんどん大口径化。同じ製品を1年売り続けることすら困難な世界だ。1年に一度、できれば半年に一度のペースでモデルチェンジする必要があるだろう。または改良によるマイナーチェンジでも良い。
③ニッチでユーザーの絶対数が少ない
基本的に危ない乗り物であり、買って乗ろうとする人は少ない。私の感覚としては、乗ること自体はそこまで難しくないと思っている。ビギナーモード、エコモードなどのパワーを抑えたモードで1〜2週間も乗れば慣れると思っている。しかし大半の人はそんなことは関係なく、わざわざリスキーなものに乗らないに越したことはないという選択をする。ようは世界のどこでも売れまくるようなジャンルではないのだ。たくさん売って大儲け・・・にはならない。
④新しいことにチャレンジすることがリスキーすぎる
振り返ると、過去の既成概念と一線を画す新型のパーツを開発、リリースすることがかなりリスキーである。ハブモーター、ダイレクトドライブ、そしてEnationのFOCBOX Unity。新しいものを生み出すには開発費や時間、労力がかかる。そしてそれが世に受け入れられるかどうかはまた別問題という厳しい現実がある。その過程で失敗もするだろう。これはせめて専門の知識や設備、ノウハウのあるパーツサプライヤーが部品単位でやるべきだろう。コンプリートボード前提で開発するとリスクが跳ね上がる。
ざっと書いたが、Enertionの場合は経営判断の悪さも拍車をかけただろう。FOCBOX Unity専門のパーツサプライヤーとして生きていく道もあったはずだ。そこで堅実に資金を蓄え、過去の過ちを糧に、またコンプリートに返り咲くなり、ビジネスの方向を再構築するなり、やり方はあったはずだ。しかしその道すら閉ざしてしまった。
FOCBOX Untyは今後再販されることは絶望的だが、朗報もある。ひとつはUnityの開発者であるジェフリー氏とVESCの生みの親であるベンジャミン氏がタッグを組み、新しいVESCを開発しているというニュースだ。もうひとつはそのジェフリー氏が近日中にUnityの新しいファームウェアをリリースするということだ。
FOCBOX Unityの魂は死なず。その設計思想は別のメーカーの製品として受け継がれる。そして他のメーカーへの指標にもなるだろう。