今回は画像がほとんどない。組み立てに集中してしまったからだ。
↑ 3D ServisasのFatBoyミニウレタンギヤドライブV1。いまは改良されたV3を販売している。
Bio boardsにも採用されているドライブで、個人的にはとても良いドライブだと思う。パワーのあるボードを組むならこれという感じで、ハブモーターのような熱問題も無いし、ダイレクトドライブのような停止直前で微妙に止まらない(あれ?って感じでピタッと止まらずススーッと進んでしまう、ちょっとしたオーバーランみたいな感じになる)ブレーキ問題もない。スピード、トルク、熱耐性、ブレーキのバランスが良いと思う。
しかしこのドライブ、組み立てには少し注意点がある。私の経験や失敗談とともに書いていく。
組み立て方は3D Servisasの販売サイトにリンクが貼ってある。今回は私も使う予定のミニウレタンギヤドライブの組み立てを話していこう。重要なポイントは組み立て説明通りに組むこと。自分の勝手な憶測を交えて組まない方が良い。
「ロックタイトとか要らないっしょ」
「説明書とは順序が違うけど先にこっちを組んじゃおう」
こういう考えは捨て去り、機械のごとく説明書通りに組もう。私の経験から得たギヤドライブ組み立てにおける重要なポイントは7つ。
①モーターシャフトを切る
はじめから難易度の高いハードルだ。規定の通りの長さに切る必要がある。私はリューターと安いダイヤモンドカッターで切った。
↑ こんな感じだ。このとき、「必ずモーターを紙などで包んで養生すること」カットした時に出てくる鉄粉がモーターに付着するからだ。できれば厚く巻いて鉄粉がモーターの磁力の影響を受けないくらいが理想。
②ロックタイト
ロックタイトのことを少し知っておかなければならない。
私自身、ロックタイトのことは存在くらいしか知らず、「別にこんなの使わなくても問題ないだろう」と思っていたら、これが大問題なのである。
今回はネジ緩み防止系の243(青い液)、はめ合い用の648(緑の液)を使う。それぞれ役割が違う。
ロックタイトメンテナンスエキスパートガイド
↑ このリンク先にどんなケースで、どのロックタイトを使うかがわかる。
ギヤドライブを組む上で、ネジ系は243、モーターシャフトとピニオンギヤを差し込む時、またはモーターキーとキー溝などのはめ込みの場所には648(はめ合い用)を使う。とくにモーターシャフトとピニオンギヤの差し込み、ピニオンギヤのイモネジ(グラブネジ)の緩み止めはかなり重要だ。ここでロックタイトを塗布しないとピニオンギヤが抜けたり、イモネジが抜けたりする。イモネジが抜けるとギヤを破損する。
モーター周り、駆動系のロックタイトを怠ると壊れる危険性がきわめて高いのでしっかり塗布しよう。(私はこれを怠りギヤを破壊した)
③バックラッシュ
簡単に言えばギヤとギヤの隙間、これをバックラッシュと言う。これが近すぎると回転が重くなるし、離れすぎると軽く回る代わりにギヤ同士がカチカチと当たってしまう。説明書によるとギヤとギヤの隙間に紙一枚が通るくらいが適切なバックラッシュだという。
調整自体は紙一枚。適切なバックラッシュかどうかの確認方法はピニオンギヤとドライブギヤを組み(ギヤカバーは付けない)、さらにウィールをプーリーの先っちょが軽く入る程度入れて、ウィールを手で回すことで確認する。ウィールを入れないと正確な感触は得られない。ギヤだけ組んだ状態で回してもダメなのだ。
↑ ギヤカバーをつけずにウィールを差し込んだ上で紙を通す。ウィールを差し込まずに紙を通しても正確な調整は出来ない。紙を抜いてから以下の確認だ。
ほんの少しウィールを回した時にカチカチとギヤが当たる感触があったらギヤが離れすぎ。回転がものすごく重いとギヤが近すぎ。理想はカチカチ当たらないけど、少し回転が重い気がする。これくらいが丁度いい。
少し重いくらいの状態から数回実走すると馴染んで回転が軽くなるのだ。もしギヤドライブを組んだら、完成時と数回走った後で、ウィールを手で回したときの感触を比べてみると良い。走った後は明らかに回転が軽くなっているはずだ。
④ボールポイントレンチ
↑ 先端が丸くなっている6角レンチ。これを使わないと組み立てに苦労するだろう。ボールポイントレンチの準備を強くお勧めする。黒い矢印の方なら斜めからでもネジを回せるのでこれで9割がたクルクルと回し、最後の締め付けは赤い矢印のほうで行う。ボールポイントのほうで最後の締め込みをするとネジ山を舐める原因になるので注意。
⑤ハンガーとギヤボックスの取り付けの角度
これを変えることが出来る設計になっている。デッキに合わせて調整しよう。基本は地面に対して水平。角度を間違えないようにしよう。
⑥グリスの塗布は全てが完全に終わってから。
①〜⑤を納得いくまでしっかり組んだと思ったらようやくグリスの塗布。グリスを塗布すると、モーター周りのロックタイト塗布は相当困難になる。バックラッシュの調整もかなりやりづらくなる。やる事をしっかりやってからグリスを塗布しよう。グリスの塗布は公式の組み立て説明書通りに組むとかなり後の方で指示がある。しかし最後にやる重要性を説いてはいない。
⑦一度完成したら全部バラすことは不可能に近い
ギヤカバーやらドライブギヤを外すことは可能だがモーターを分離することは不可能に近い。ピニオンギヤとモーターシャフトをロックタイトで固着させているからだ。組む以上はキッチリと完成させて使い倒す覚悟が必要だ。
なにやら面倒なことが多いように見えるが、しっかり組めばハブモーターでは実現できない動力性能を得られるドライブなので、個人的に良いドライブだと思っている。ハブモーターに関して、私としては今後なにかしらのブレイクスルーがない限り、現状ではハブモーターを使うことはないだろう。それくらい差がある。
熱問題、トルク、ブレーキ、乗り心地、これらにはギヤドライブに軍配があがる。ハブモーターの良さはメンテナンスフリーで音が静かなところだ。パワー派ならギヤドライブ、またはベルトドライブ。お手軽に済ませたいユーザーならハブモーターという棲み分けになると思う。ハブモーターでも40km/hは充分に出る。
“ギヤドライブを組む (FatBoy ミニウレタンギヤドライブ V1)” への1件のフィードバック
コメントは受け付けていません。