バッテリー交換式ボードと互換性について考える

前提としてネジを外すことなく交換できるタイプに関しての話とする。

Inboard M1、Koowheel、これらのボードはバッテリーを手軽にユーザーが交換できるようになっている。

バッテリーとドライブが一体型になっているユニットもある。Mellow Drive、Landwheelがそれにあたる。手持ちの電動ではない通常のロングボードを電動化できます、というユニットだ。これもユーザー側でバッテリーを交換できる製品である。

↑ Mellow Drive。手持ちのボードにこれをつけるだけで電動化できる。

しかしこれらのアイデア、「おっ?」と関心を持つところまでいくものの、メジャーにはなりきれない。一見便利に見えるが、メリットとデメリットを考えた時にデメリットの方が多い気がする。

まず、バッテリーひとつあたりの容量が少ない。99Whのバッテリーを3個持っていたとしてトータル297Wh。しかし数値上はトータル297Whとしても、1つで297Whのバッテリーとは条件はイコールにはならない。デカいバッテリーは単体でパワーを出せるが、小さいバッテリーはパワーを出せない。交換式ではパワーマシンを構築するのは不可能だろう。

充電も面倒だ。3つ分の手間がかかる。充電器がひとつならバッテリーを入れ替える手間がある。充電器も3つ用意すれば一回で終わるがそれはコストがかかる。

重くはなるが、デカいバッテリーひとつを積んだボードの方がなにかとメリットが大きい。体積あたりの容量も多めになるしパワーも出せる。交換の必要もない。

そんな理由からか、交換式はひっそりと消えると思っていたのだが・・・

そこで有名なデッキメーカーであるLoadedが、Unlimited ionというバッテリーとドライブ一体型ユニットを作っている会社と提携した。

↑ これが公式なLoadedの電動スケートボードということになるのだろう。Muir skateで販売している。

これも上で述べたデメリットの域を出ていない。容量もパワーも少なめ。そのわりには値段が高い。

そこでもうひとつのデメリットを挙げる。それは各社バッテリーが専用という点である。互換性がない。当たり前の話ではあるが。

で、実はここからが本題。バッテリーの互換性について考えたい。

「いや、それは無理っしょ」と思うわけだが、私は常々この交換用バッテリーが専用品であることに疑問を感じている。電動スケボーとしてはたしかに低容量だが、モバイルバッテリーとしては悪くない。交換式バッテリーは他への流用が出来た方が良いのではないか?と思うわけです。

そこで昔からアイデアだけはあるのだが、電動工具のバッテリーをスケボーに使うのはどうか?と。

日本なら例えばマキタがある。マキタのバッテリーは自社製品である電動工具各種からコードレス掃除機にまで使える。もちろんマキタの規格で統一されているので、マキタの製品でしか使えない。しかもマキタのバッテリーは18Vが主流であり、電動スケボーには使えない。いちおうマキタのラインナップに36Vもあるがこれはバッテリーがデカすぎる。

(※ マキタは2019・10月に40V maxシリーズを発表した。後述のマルチボルト同様定格36V。しかし18V機器の互換のない36V専用の10s1pバッテリー。)

そこで日立工機は「マルチボルト」という電動工具シリーズを展開している。バッテリーと工具側に工夫があり、18Vと36Vが工具によって自動で切り変わる製品。パワーの必要な工具では36V、そうではない工具では18Vで動作するというもの。

↑ 仕組みはこれ。工具側の電極の形が18V工具と36V工具で違うのだ。18V工具では5s2p、36V工具では10s1pで接続されるという構造。(spについては自作データベース参照)

↑ HiKOKIの資料を参考に、マルチボルトを三次元的に表現するとするとおそらくこうなる。右の緑の囲いが工具側の電極。思わず唸ってしまう工夫だ。36Vは1p構成なので放電力のある高性能なセルが必須だ。安物の互換バッテリーなんかとても使えないだろう。

互換バッテリーに関してはこちら。

↑ これは21700セルを使っている。144Wh。出力1440Wということは1セルあたり40A放電。またWowgo2のバッテリーと数値上の容量は同等。このマルチボルト シリーズは18650バージョンもある。そちらは90Wh。1080Wなので最大30A放電。Unlimited ionと同等だ。距離は期待できないが速度40km/h以下程度。

公表されているスペックを鵜呑みにするなら、18650ver.のセルはソニームラタVTC5Aかもしれない。(後日分解した結果、Samsung25Sでした。)

20700ver.のほうは少し疑問が残る。4000mAhで40A放電できるセルは知っている限りでは存在しない。21700を使っているとしても30Aがせいぜいだろう。

容量を信頼したとしてハイペースで走った場合、18650バージョン(90Wh)でレンジ4km程度、21700バージョン(144Wh)ならレンジ6〜7km程度の電動スケボーを作れるくらいのスペック。ゆっくり走ればもう2〜3割くらい距離が伸びる。

ちなみに日立工機はHiKOKIと名前を変えました。ヒコーキではなくハイコーキです。

36Vなら使えるんじゃないかあ?BMSはおそらく充電器に組み込まれている。つまりセルフ放電バイパス。

ハイコーキは工具だけでなく、工事現場で使える(遊べる)電動スケボーをラインナップに入れた方が良いのではないか?・・・冗談ではあるが、実際に作ることは可能であるということ。おそらく、全固体バッテリーが実用化されればこのように工具の垣根を越えたボーダーレスで使える製品も出てくるのではないか?と思っている。今はボーダーレスにはまだ早いかもしれない。

このハイコーキのバッテリー、スケボーに限らず、例えばLEDランタンとかモバイルバッテリー、はたまたコードレスミニ扇風機にも使えそうなものだが。(後で調べたらすでにラインナップされていた)

考え方としてはこれとボーダーレスの一環だろう。工具以外の展開も面白そう、というお話です。