6374モーター

電動スケボーに使われているモーターは色々あるが、今回は6374について。

自作の電動スケボーでよく使われるアウトランナーモーターには6374、6355、5055などがある。ベルトドライブやギヤドライブで使う。

6374などの名称における前半二桁はモーター直径、後半二桁は長さである。デカいほどパワーがあるがそのぶん重たくなる。

↑ 6374モーター。

市販の完成品電動スケボーにおいて、6374は滅多に使われない。めちゃくちゃハイパワー、ハイスペックだからだ。

誰でも買える市販のボードに6374を搭載するとホントにヤバイ。おそらく怪我人、死亡者続出で責任問題、訴訟にまで発展しかねない。ハッキリ言って「初めて電動スケボーやります!」という人には6374を使わせたくないし、おそらく高確率で使いこなせない。

市販の完成品で使用されるのはせいぜい5055、5065である。たまに6368などがあるが、パワーは抑えられているケースがほとんど。

6374をESCによってパワーを抑えることも可能だが、そうすると重いだけで宝の持ち腐れ。6374はけっこう重たい。6374は自作で、自己責任のもとで、使える自信がある者が使う、使い手をかなり選ぶハイパワーモーターと言える。

メーカー公表値でひとつあたり定格3500W前後である。もし目一杯使えるならばひとつあたり約4.7馬力。

12s(12直列)の満充電で約50V、65Aまで放電すれば3250W。デュアルモーターなら130Aで6500Wというとんでもない数値になる。12s、40A(モーターひとつ20A)、2輪で合計2000Wも出力すればそこらの市販の電動スケボーを蹴散らせると考えると、6500Wとは電動スケボーにおいては制御不能なバケモノじみた数値と言える。

競輪選手のスプリントでも約1700W。ここ一番のゴール前、レースが終わればあとはどうなっても良いという状況でトップレベルのプロ選手が何千万円、何億円の賞金を手にするために死にものぐるいで短時間に繰り出すピークパワーがおおよそ1700W。電動スケボーは機種によってはこれを指先ひとつで出力できる。ちなみに一般人ではロードバイクで1000Wを出力することすら困難である。

6355や5055でも充分にパワーはある。Evolveは5065モーターで1500Wだ。

6374モーターでボードを組めば、そりゃもうエキサイティングでゴキゲンなボードになる。50km/hなど簡単に超える。KV値とギヤ比、ウィールの大きさなどをうまく組み合わせれば60km/hオーバーも余裕で狙える。加速力、登坂力も尋常ではない。

こんな話を聞いて「やめろ。危ない。バカかお前は?」と思う人が大半だと思うが、そう思わない人間が使うのが6374モーターである。

6374モーターの良さはそのパワーもさることながら、熱に対しても余裕があることだろう。モーター剥き出しのアウトランナーモーターならなおさら冷却も良い。エキサイティングなボードを作るなら6374だ。しかし使用においては欠点というか考慮すべき点がかなり多い。

まず重たいこと。そして値段も高い。扱う人間にライディングの技量と知識をそれなりに求めること。

モーターの知識も少し必要だ。まずモーターシャフトがモーターキーかD断面か?大半はモーターキーを使う。

↑ これがモーターキー。モーターシャフトにモータープーリー(モーターギヤ)を固定するための小さな部品。

↑ 画像のモーターシャフトにキー溝と呼ばれる凹みがある。ここにモーターキーをはめ込むのだが、基本的にはロックタイト638 or 648で接着する。

そしてモータープーリー(モーターギヤ)もロックタイト638、648でガッチリ固定する。すると恐ろしいほどの接着力によりほぼ分離不能になる。接着した時点でそのモーターはそのドライブと心中する覚悟で使い倒すしかない。

そしてモーターシャフトには太さがある。6374モーターだと8mmもしくは10mm。これは要確認だ。使うモータープーリーやモーターギヤによってシャフトの太さのチョイスも異なる。

74mmという長さもクセモノで、使うトラックのハンガーの長さ(ハンガー幅)も、ベルトドライブ、ギヤドライブに関わらず218mm以上になるだろう。(デュアルモーターの場合)

3本のモーターケーブルの太さやゴールドプラグのサイズもメーカー(モーター)によって違う。ケーブルはだいたい12AWGもしくは14AWGだが、私は14AWGケーブルのモーターを勧める。12AWGは太すぎて取り回しにくい。ゴールドプラグは4mmまたは5.5mmだがこれはどちらでも良い。そしてFOCのホールセンサーコネクタの規格は、できればVESCにそのまま使えるJST-PH(2mmピッチ)を使っているモーターが望ましい。これらの規格についてはこちらを参考にしてほしい。

そして二本足でデッキの上に立つだけの電動スケボー。急加速、急減速はご法度だ。VESCアクセルとブレーキをほどよくマイルドに調整する必要がある。つまりVESCの使用が前提であり、セットアップの知識も当然必須となる。

さらにはバッテリーも6374を充分にサポートできるバッテリーが必要だ。最低でも40Aくらいは余裕をもって使えるバッテリーが望ましい。

「俺はハイスピードでかっ飛ばしたいんス!」という人には6374は有力な候補だ。しかし蛮勇だけでは使いこなせない。多少の財力、工作知識、ライディングスキル、経験などの全てが求められる。

私は麻薬などもちろん使ったことはないがそれに近いものかもしれない。

「もう市販のボードじゃ満足できないんです。ハイパワーじゃないと面白くないんです。」

そういう感じで、良くも悪くも出来上がった人間が手を出すのが6374なのだ。