VESCの4大設定

このブログではVESCが当たり前のように出てくるが、肝心な4大設定にはあまり触れていない。

いちおう過去にはこのリンク先で触れている。

4大設定で走りの8〜9割は決まる。残りの12割の最終的な味付けの設定としてこちらを参照。

改めて4大設定とはなにか?

バッテリーの出力と回生電流。モーター出力の定義とブレーキ。ざっくり言うとこの4つ。

↑ MetrのModes画面。上段緑枠がバッテリーの出力と回生電流。下段黄枠がモーターの最大出力とブレーキ。これらの数値を決めるにあたり、ある程度のルールと個人の好み、ボードの構成を踏まえて決めていく。

まずはアクセルを開けた時のパワー・トルク感を決めるバッテリー出力から。Battery current Maxこれはほぼ任意の値となるが、モーターのワット数やバッテリーのもつ最大出力によっては制限がある。これが走りに直結するワット数を決める。例えば定格36VのバッテリーにBattery current Max 40A設定なら最大で1440Wが出力される。(厳密には満充電だと42Vなのでもう少し出力が上がる)

これはアクセルの開け具合や状況によって変わる。例えばゼロ発進や上り坂ならアクセル全開で1440Wを吐き出すこともあるが、加速してある程度に速度が出ていればそこから1440Wも出力されない。自転車と理屈は同じでスタート時や上り坂ではペダルを強く踏み込んで脚力を使う。平地だと少し走り出してある程度の勢いがつけば、あとは軽くペダルを回せるのでそんなに力を使わない。これと同じ。

その力強くペダルを踏む局面を電動スケボーに当てはめたとき、最大のパワーは自転車ならば本人の脚力と気合い。電動スケボーではバッテリーとモーターの性能、そしてこのBattery current Maxの数値で決まる。

経験上、10s・12sバッテリーにおいて40A以上でかなりエキサイティングな加速をする。そのかわりバッテリーは3p(3並列)以上は必須だ。バッテリーが貧弱だと40Aという数値は使えない。Battery current Maxは本人の好みがかなりのウエイトを占める数値ではあるものの、バッテリーやモーターの性能次第では制限がかかる。

次はバッテリーの回生電流。Battery current Max Regen これはハイブリッドカーでもお馴染みの回生電流を決める数値。バッテリーセルの最大充電電流 × 並列数 × 1.5倍あたりが無難な数値だ。1.5倍というのは、電動スケボーにおいて何十秒も最大のブレーキをかけ続ける事はないので、僅かな間だけ1.5倍程度上振れしても問題ないとしているためだ。上の画像では-36Aとなっているが、これはソニームラタVTC6セルの最大充電電流4A、それが6並列、さらに1.5倍を掛けた合計36Aを根拠としている。

しかしこれは目安であり、とくに高速域でイマイチブレーキの効きが悪いと感じたらこれを上げる感じだ。ただあまり上げすぎると高速域でのブレーキの効きと引き換えに、貧弱な構成のバッテリーだとバッテリーに優しくないかもしれない。

上記のバッテリー関連のふたつの設定値はVESCファームウェアならばデュアルモーターでは半分の数値を入力する。

10sバッテリーとデュアルモーターで総出力1800Wをターゲットにする場合、1800W ÷ 10s定格36V = 50A。それをさらに割った25Aが入力するべき数値である。回生電流のリジェネも考え方は同じ。

これがFOCBOX Unityファームウェアの場合は2で割ることなくそのまま50Aを入力する。この投稿のはじめにあったMetrの設定画像はFOCBOX Unityファームウェアの設定であり、これがVESCファームウェアならば入力する数値はそれぞれ半分の20A、-18Aとなる。

上記のバッテリー関連のふたつの数値はバッテリー性能に左右される。出力アンペア、充電アンペアに優れたバッテリーセルが有利であり、また並列(p)が多いほど有利であり、大きい数値を許容するようになる。

次はMotor current Max。これはモーターの定格出力に合わせた電流を入力する。これは本人の好みとは関係なく定数だ。VESCにモーターの最大出力をお知らせしておく意味合いが強い。例えばひとつあたり1500Wと言われているモーターで、使用しているバッテリーが10sならば、1500W ÷ 10sの定格36V = 41.6Aがおおよその入力数値となる。ただしそんなにシビアでもないので、この場合は41.6V → 40Aに簡略化しても大きな問題はない。

最後にMotor Brake Max 、全体的なブレーキの効き具合。これは上記のMotor current Maxの数値を上限としたマイナス値の好みの数値を入力する。上の例で言えば41.6Aをマイナス値にした- 41.6Aを上限として、設定範囲は0A 〜 – 41.6Aとなる。まあ0Aはあり得ないのでとりあえず-25〜-40Aあたりを入力し、あとはブレーキを実際に掛けてみて好みの数値を探る感じになる。やってみると1A違うだけで意外にもブレーキの効きが変わるのがわかると思う。

モーター関連のこのふたつの数値はモーターの性能にかなり左右される。ワット数が大きいモーターほど扱える数値が大きくなる。出力の大きいモーターはパワーだけでなくブレーキも有利になる。そのぶん価格も高く、そして大きく、重い。

今回の投稿をおおまかな参考として数値を入れてみて、あとは走りながら好みの数値に修正していくと良い。設定が決まれば自分にピッタリとフィットしためちゃくちゃ爽快なボードの出来上がりだ!