電動スケボーも高電圧の時代へ

12s(12直列)で長らく頭打ちだった電動スケボーの電圧は、2020年末から2021年にかけて徐々にそれを打ち破る形になった。

今までVESCに組み込まれていたモータードライバーの上限が60V、電圧スパイクを考慮すると12sの50.4Vが安全なところとされていた。まれに13sにチャレンジする猛者もいて、やれまだイケるとかVESCが焼けたとか言っていたので、12sが安全だったのは概ね正しい判断であった。

そんな時代も終わり、高電圧対応の新時代VESCがリリースされ始めたのが最近。

高電圧だとモーターKV値の関係で回転数の上限が上がり、しいては最高速が伸びるというのは自作データベース・バッテリー自作知識編で述べた。しかし今、高電圧なバッテリーおよびVESCを使うときはKV値を抑え気味にしたモーターを使うという状況になっている。12sのベルトドライブではATにおいてはギヤ比やタイヤ径にもよるがおおよそ140〜190KVという感じだった。前回紹介したXL-Rは20sでモーターは110KVだ。20s、8インチタイヤ、標準的なギヤ比という組み合わせでは140KVだと最高速が伸びすぎるのである。

そんな変化もあるなか、今回は高電圧のさらなるメリットを述べていく。

電動スケボーに限らず、速くパワフルに走らせるにはワット数がモノを言う。電圧が高いとワット数を稼ぎやすい。

電圧・・高いほど筋力がある人

電流・・その人の本気度、気合い

こんなふうに例えてみる。

非力な(36V)人が、めちゃくちゃ本気を出した(30A)・・・36V × 30A = 1080W

鍛えてるマッチョ(72V)が、そこそこ適当に力を入れてみた(15A)・・・72V × 15A = 1080W

結果は同じ。

非力な36Vな人はもう30Aが限界なんですというところで、マッチョな人は「俺も本気を出せば30Aいけますよ!」と言い始めた。

72V × 30A = 2160W

元の筋力(電圧)が違うので同じ本気度でも結果が違う。電圧と電流はこのように例えるとわかりやすいと思う、多分。電圧というのは基本ステータスみたいなものだ。コレが元から高ければパワー(ワット数)も出しやすい。

そして同じワット数を叩き出すなら高電圧なら電流が少なくて済む。電流が少なければ熱も少なくなる。これは先程の例えにも言える。

非力(36V)の人が本気を出した(30A)。身体が熱くなった。フゥ〜フゥ〜・・息も上がって血圧もメチャ上がった〜。結果は1080W,

マッチョ(72V)の人が適当にやった(15A)。別にこんなの大したこと無いっすよ、息も上がらないしウォーミングアップにもならないっすよ。血圧?ちょっと上がったかな?しかし結果は同じ1080W。

高電圧というのはこういうことである。血圧や熱に例えたストレスは電気的にはケーブルに掛かると思ってもらいたい。高電圧だと同じワット数を生成するにも電流が少なくて済むのでケーブルに負担がかからないし、熱も出にくい。つまり高電圧なら多少細いケーブルでも問題ないということになる。

走っているだけでは分かりにくいが、高電圧ってだけで動力的にはかなりメリットがある。デメリットはなんだ?と言われると高電圧に対応するためのVESCの内部の部品の部分だ。充電器も高電圧の数値に合わせたモノにしなければならない。コストが掛かる。長らく12sで頭打ちだった理由がコレである。

高電圧時代黎明期とも言える現在、思ったよりも各社バラバラの電圧になった。14s、18s、20sなど。思ったよりもまとまりがないが、このまま突き進んだ方が今後の展開としては面白いだろうと思う。