TPUフィラメントとエクストルーダーの詰まり

今回は3Dプリンターの話。電動スケボーと直接関係ないので興味が無ければ読み飛ばしてください。今回は表題に対する、私なりのトラブル対処法を紹介します。

一般のユーザーが使う3Dプリンターの方式に熱溶解積層式(FDM)というものがあり、これはフィラメントという材料を熱で溶かし、ノズルからそれを射出して一層ずつ積み重ねて造形する。

このフィラメントにはPLAやABS、PETGなどいろんな特性を持つフィラメントがあり、ユーザーは用途に合わせて選択する。その中にはTPUフィラメントという柔らかい素材があり、出来上がった造形物はゴムのように弾力があるものが出来上がる。(ほとんど伸びない、スニーカーの靴底のような感じ)

出来上がった造形物はけっこう頑丈で、柔軟ゆえに割れることは皆無。引っ張りにも強く靱性も強い。私もかなりお世話になっている。

↑ ランドヤッツEVOデッキ用のテールガード。硬いフィラメントでは割れるが、TPUフィラメントなら割れることはない。

・・・しかしながらこのTPUフィラメント、けっこう扱いが難しく上手く造形できないトラブルが多発する傾向がある。

原因はフィラメントをうまくノズルへと送り出せずに詰まってしまうこと。今回は私なりのその原因と対策を紹介します。

①リトラクトを無しにする

溶かしたフィラメントを射出しながら印刷するわけだが、ノズルが大きく移動する際にはフィラメントが垂れないようにフィラメントを僅かに引っ込めるのがリトラクト。この出したり引っ込めたりすることでフィラメントがエクストルーダー(ギザギザのついたローラーとモーターでフィラメントを送り出す部分)により潰された状態になることがある。

↑ 本来は真っ直ぐなはずのフィラメントがエクストルーダーによるリトラクト動作、つまり正回転、逆回転を繰り返すことでこのように潰れてしまうことがある。ローラーでグリグリと潰すような感じだ。これによりしっかりローラーに食いつかなくなりノズルへと送り出すことが出来なくなる。柔らかい素材ゆえのトラブルだ。

そこで設定で思い切ってリトラクトを無しにする。ノズル移動の際にフィラメントが少し垂れるがそこは目を瞑る。

②対策品のエクストルーダー

もし、お使いの3Dプリンターにそういうものが売っているならば、それに替えてみる。

③部屋の温度を下げる

私の場合、この時期暑い昼間にはよく失敗し、涼しい夜間は成功する傾向があった。元のフィラメント自体も柔らかいよりは冷えて固めのほうが良いのかもしれない。夏の日中、部屋のエアコンを使っていない状態だと使用前のTPUフィラメント自体が柔らかくなっている。これも①の状態を引き起こす可能性がある。

④ノズルの温度を少し下げてみる。

ノズルからエクストルーダーに熱が伝わり、溶ける前のフィラメントまで熱で柔らかくなり、結果としてエクストルーダーの部分でフィラメントが変形しやすくなっている可能性がある。

⑤フィラメントのスプーラーを検討する

フィラメントは円筒状のスプールにグルグルと巻かれていて、それをエクストルーダーが引っ張ることで徐々にフィラメントをノズルに送り出す。そのスプールを円滑に回して抵抗なく送り出せるようにするのがスプーラー。ローラー台のようなものだ。これによりエクストルーダーがフィラメントを引き込む際の抵抗を減らして詰まりのトラブルを軽減させる。経験上、これは他の対策法よりは優先度が低い。

⑥ノズルの冷却ファンがしっかり回っているか

3Dプリンターのモデルにもよるかもしれないが、私のケースで冷却ファンが止まっていてノズルの周辺が適正に冷えず、①の現象を引き起こしやすくしていた事があった。造形の際にクモの糸のように細く糸を引いたフィラメントがファンにくっ付いていたのだ。これを取り除いたらあっさりファンが回った。

⑦造形テーブルとノズルのクリアランス

これのクリアランスが適正ではない場合、TPUはほかのフィラメントよりも詰まりやすい傾向がある。一層目から詰まるときはこれをしっかり調整してみると良いかもしれない。クリアランスが狭いとTPUはよく詰まる。ほかのフィラメントだと少しごまかしが効いて、強引に一層目を印刷できてしまうことが多い。

⑧造形テーブルからの剥がれ

⑦に付随する内容で、ABSフィラメントでよく言われる造形テーブルからの剥がれの現象が原因となることも。ノズルとテーブルから剥がれた造形物が近づいて、フィラメントをうまく押し出せずに結果として詰まる。詰まり云々以前に造形物が反った時点でダメ。これに関してはTPUフィラメントで大きな造形物を作るにあたり有り得る現象。造形テーブルへの食いつきを良くするための対策が必要となる。私はケープスーパーハードを吹き付けて対策する。

TPUフィラメント造形のトラブルに悩んでいる人が、これで1人でも減ってくれれば幸いです。