バッテリーセルの選択

電動スケボーにはいろんなタイプのバッテリーがあるのだが、少しおさらいをしようと思う。まずは容量と出力の関係。同じ大きさ(18650、21700など)なら、容量が多いほど最大出力は下がる。

高出力なタイプなら短距離選手、容量が多いなら長距離選手みたいなイメージだ。もう少し例えを変えると、高出力なタイプはスタミナが少なめのハードパンチャー、容量が多いタイプならパンチ力は無いけどスタミナで勝負するタイプというイメージ。

18650 容量2.0Ah(約20A〜25A)

サムスン20R、サムスン20S

18650 容量2.5Ah(約20〜30A)

サムスン25R、サムスン25S、

ソニームラタVTC5、

ソニームラタVTC5A、LG HE4

サンヨーUR18650NSX

18650 容量3.0Ah(約15A)

サムスン30Q

ソニームラタVTC6

LG HG2

18650 容量3.5Ah(約8〜10A)

サムスン35E、LG M36、LG MJ1

サンヨー18650GA

20700容量4.2Ah(約15A)

サンヨー20700B

21700容量3Ah(約35A)

サムスン30T

21700容量4Ah(約30A)

サムスン40T

21700容量5Ah(約10A)

サムスン50E

ざっと電動スケボーにおいて有名なセルを並べてみた。いくつかピックアップしてみよう。

サムスン20R・・格安バッテリーの代名詞。WowgoやMeepoの安いモデルに使われている。性能もそれなり。

サムスン25R・・比較的安い。同ランク容量のセルの中では格段に出力特性が劣る。

サムスン25S・・同ランクでは最強レベル。30A近くまで放電でき、電圧の落ち(サグ)も少なめ。ハイコーキのマルチボルトバッテリーに使われているセル。18650の1並列(1p)で中華ボードを動かせるのはコレとVTC5Aくらいだろう。

ソニームラタVTC5A・・サムスン25Sにわずかに劣る。しかし悪くないセルだ。

サムスン30Q・・値段と性能のバランスが良く、とくに電動スケボーと相性がよい。2p〜8pくらいまで幅広く使える。ただしニセモノも多いのが難点。

ソニームラタVTC6・・30Qよりわずかに性能が良い。そのぶん値段もわずかに高め。

サムスン35E・・Evolve GTRや中華ATに使われているセル。容量は多いが出力は弱い。4p以上で使いたい。

サンヨー18650GA・・35Eよりわずかに性能が良い。4p以上で使いたい。

サンヨー20700B・・放電特性と容量のバランスに優れている。大容量のボードにしたいときは定番のセル。10s4pでも定格600Wh超。しかし18650よりやや大きい。

サムスン30T・・高出力タイプ。1〜2pで威力を発揮するが、いかんせん容量少なめ。21700なので大きめ。直径21mm、長さ70mm。

サムスン40T・・高出力タイプ。2pあたりで威力を発揮する。容量も多く、最近ではMeepoの上級モデルやBackfireの新世代モデルに使われている。とくにBackfire miniは12s1pであり、パワーを求めなければ1pでもイケるほどの出力特性、加えて4000mAhの容量。21700。

サムスン50E・・大容量タイプの5000mAh。4p以上を推奨。まだ使用例は聞かないが、大容量を狙うならかなり有望なセルだと思っている。21700。私は先日発注した。

市販の電動スケボーはおおよそ15A〜30A(ピーク)を放電する。自作機なら40Aオーバーも充分にあり得る。もちろん市販の電動スケボーは出力やコストに応じて最適なバッテリーがメーカー側で選択されている。

問題は格安品への交換やアップグレードの時だ。

例えば「中華の10s2pの格安バッテリー見つけた!」とする

↑ これだ。安い!35E10s2p。

しかしちょっと待った〜〜!

35Eの2pでは定格最大16A放電だ。ちょっと頼りない。

↑ 説明書だと最大連続放電15Aということになっている。

3.5Ah × 3.6V × 20セル = 252Wh

ぱっと見の容量は多い。しかし定格最大放電近くまで放電するとセルはけっこうな熱を持つのだ。

↑ 面白い実験動画がある。サンヨー18650GAを放電させた時の熱を測るものだ。18650GAは35Eよりわずかに性能が良いが、ほぼ同格とみていい。

↑ 18650GAは定格10Aということになっているが、8Aで放電し続けると62度まで上がる。

↑ 定格オーバーの12A放電では81度だ。

一般的に中華ハブモーターのボードは最大20Aあたりまで放電するのだが、(Meepo NLS Proはもう少し放電電流が大きい可能性あり)上記の35E格安バッテリーの定格出力を超えてしまうのだ。つまり坂道を上る、強い向かい風の中を走るなど、継続的な出力にはまったく向かない。35Eの10s2pは電動スケボー的にはアウトだ。余裕がなさすぎる。

逆に言えば、無風または追い風での平地走行などでは常にスロットルを入れることはない。とくに転がりの良いドライブだとアクセルオンとオフを繰り返す。アクセルオフでも大きく減速することなくスーーッと転がっていく。つまりアクセルオフによりバッテリーの出力が途切れることがあるのだ。これなら負担が軽減され、熱も持ちにくくなるだろう。35E10s2pでも条件次第では走れなくもないのだが、ユーザーが色んな状況下で走ることを想定すれば、やはり市販車として採用は厳しいだろう。

10s2pを使うなら3Ah、2.5Ah、2.0Ahのセルを使うべきだと思う。3.5Ahのセルは定格出力が足りない。少し余裕がない。

Evolve GTRは35Eを4pで使っている。ギリギリ定格を超えないくらいだろう。定格合計32A。

セルを選ぶときは容量だけではなく、出力を考慮しよう。そして並列(p)を見よう。並列が多いほど負担は減る。