プレオーダー、簡単に言うと予約である。先に資金を集めるという目的がある。また前もって注文を受けておけば、生産数の見通しを立てやすいというのもあるだろう。予約という体裁にはなっているが、本質的にはクラウドファンディングと変わらない。構想は出来ていてプロトタイプもある。あとは資金を受けた(予約してくれた人たちのお金)あとに細かい変更やら生産計画を立てる。予約を受け付けている時点ではまだその製品(最終的な完成出荷品)は存在しない。
電動スケボーの世界(日本を除く)ではこれが当たり前のように横行している。別にこのやり方を批判をするわけではない、約束の期日にしっかり出荷してくれれば・・・
まあこの業界、平気で約束を反故にする。遅延、延期、当たり前である。ズルズルと伸びまくる。最近はその酷さに拍車をかけて、在庫アリということでポチったあとに遅延が発覚することすらある。つまり「実は在庫がないんです」ということである。せめて「予約受付中」にしておけよ・・・と思うのだが。
なぜそんな嘘をついてまでポチらせるのか?おそらく資金がないからだろう。メーカーは目先の運転資金が欲しいのだ。
電動スケボーは少し特殊な商材で、不良品を作ろうものなら事故、怪我、場合によっては死亡まであり得る。本来なら然るべき試験を受けてから出荷するべきものであると思う。しかしそんな公的な機関など存在しない。
なのでメーカーの責任においてしっかりとした製品を作る必要がある。これが信頼を生み、ゆくゆくはブランドとして定着していくだろう。しかしそれがまた難しい・・・今はネットが常識であるゆえ、悪い噂は速攻で世界を駆け巡る。
「トラックが割れた」
「火を噴いた」
「急に止まってケガをした」
「よくわからんエラーが出た」
「ウィールが欠けた」
こうなると信頼は一気に失墜する。これを見た人たちは当然その製品を敬遠する。すると売れなくなる。売れなければ資金が集まらず、生産や開発も困難になるという構図だ。こうならないためにも僅かな不具合を発見すれば出荷を止めて修正しなければならない。修正というよりその部品をほぼ作り直すことになるだろう。そうなれば1ヶ月単位で計画がズレる。これも遅延の原因のひとつ。
部品の取引先とのトラブルもある。求めている耐久性やら精度を満たしていないとか、原料が違うとか、要望通りの部品が来なかったら再発注でこれまた遅延の原因となる。資金も圧迫するだろう。
この業界の特徴は、個々の企業の規模がかなり小さいということだ。資金の無さはこれが要因であり、そもそも電動スケボーのユーザーというのはかなり少ないと思う。はっきり言って商売としてあんまり旨味はないと思う。おそらく一国の内需で成り立つのはおそらくアメリカ、中国、あとはオーストラリアくらいだろう。その国の環境や文化が大いに関係する。日本でも公道で解禁されれば爆発的に普及するだろう。
1国内の内需だけでは商売にならんということで、世界中を相手に商売しなければならない前提だ。この世界中・・というのがまた厄介で不良品を世界中に出荷してしまったら保証も大変である。上記のように信用失墜も世界レベルで起きてしまう。
世界的にもユーザーが少ない理由は簡単で、一般人から見たら危ない乗り物にしか見えないからだ。イメージとしてケガのリスクが先にくる。実際にコケたら大怪我をする。
「こんな危ないのやらないよ」というのが大半の一般人の率直な意見だろう。たぶんこの感覚は万国共通だと思う。
ユーザーが少なければ個々の企業の規模も小さい。潤沢な資金で経営しているわけではない。結果として目先の金を集めるだけでも必死になる。
そんなわけで悪い噂が立てば一気に雲行きが怪しくなり、資金の回転が止まりかねない。ここでさらに危険な一手を打つ。それは「セール」だ。イースターだのハロウィンだのブラックフライデーだの、何かにこじつけて安売りをしてでも資金を掻き集めようとする。これらのイベントを絡めた慣習的なものはまだ良い。それ以外によくわからない時期にセールを連発する会社はもう黄信号。セールとプレオーダーの合わせ技という「???」という状態だ。
「セールに乗って安く買えた!ラッキー!」というのは早計で、肝心な商品がなかなか来ないという仕打ちを受けることがある。
セールは資金集め以外にモデル末期の在庫処分というパターンもある。新型を発表したら旧モデルは売れなくなるからだ。売れないモデルの在庫処分をセールという形で売り尽くして終売にすることもある。
酷いパターンでは不具合が発覚した製品、もしくは生産ロットをセールの名目で処分することもある。セールには何かしらの裏があるということだ。善意だけで安売りなどしない。
セール=安い、で飛びつくのは少し短絡的で、上記の事情くらいは知った上で飛びつくほうが後々イヤな思いはしないだろう。
銀行から融資を受けないのか?融資を受けた上でこの状態なのか?そこはわからない。この業界におけるプレオーダーというのは基本的に企業側の都合が優先され、ユーザー側にとっては信用に欠けた怪しいものである、ということだ。日本における予約注文と同じ感覚でいると痛い目に遭う可能性がある。
長々と書いたが、一言で言えば
「プレオーダーを利用してユーザーを巻き込んだ自転車操業がこの業界の常」であるということ。
次回はプレオーダーにおける、さらにいくつかの考察をする。
「人はなぜプレオーダーに飛びつくのか?」
「プレオーダーに飛びつくことは結果的に得なのか?」
「プレオーダーは悪なのか?」
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