はじめにFOCBOX Unity自体、開発が終了しているという事実がある。Unityを開発製造していたEnertionは倒産しており、現在は謎のショップで販売している。(少し下にリンク先あり)
これはFOCBOX Unityがハードウェアとしては今後は更新されないということを示している。
↑ そう思われていたが、Massive Statorというショップで後継機が販売されたり、Build kit board(通称BKB)ではXenithという兄弟機とも呼べるものが販売されている。つまり、なんだかんだと揉め事があったが結局は安定的に供給されるようになった。
Enertion時代の最終ファームウェアは23.46。基本的にはこれで電動スケボーとして問題なく動作する。この時点でFOCBOX Unity自体は完成されており不具合はほぼ出尽くしていると思われる。
いちおうVESCの公式ファームウェア5.xxも使える。FOCBOX Unityの開発者が実質後継機とも言えるStorm core(販売元はLacroix)の開発にも携わっており、私たちのようなエンドユーザーをソフトウェアの観点から今もサポートしてくれている。
しかしFOCBOX Unityの流れを組むStorm coreの設計は著作権の侵害だとしてEnertionの元代表と、FOCBOX UnityおよびStorm cornの開発者が対立するという複雑な関係にもなっている。
そしてEnertionが倒産し謎のショップMassive statorで販売される体制になってからUnityの価格は大幅に安くなった。これが皮肉にもStorm coreに対して価格面で大幅に優位となっているのも事実である。
2020.10現在ではMassive statorにて購入可能。
BKB Zenithという実質ほぼUnityと同じESCも2021.1月より販売されている。
FOCBOX unityのメリット
ほぼAndroid限定になりますが・・・
いろんなバッテリー、いろんなモーターに対応でき、設定がスマホで簡単に行えることです。スピードやその時の出力をスマホで監視できたりもします。
リモコンのスロットルを開けた時どれくらい加速するか、その加速具合もスマホで細かく調整できます。よほどのことがない限りは乗りにくいマシンにはなりません。自分に合ったセットアップができます。
今までのVESCはとにかく使い方がわかりづらい、モーターのキャリブレーション(使用するモーターがどのような物なのか、検知してVESCにデータを書き込む初期作業)も、いちいちボードのケースを開けてパソコンにUSBに繋いでいました。FOCBOX unityならこれもスマホで簡単に行えます。ケースを開ける必要はありません。
個人的な見解になりますが、初めて買うボードなら自作用データベース(ESC・VESC編) に記述してある中国メーカーのホビーウイングESC搭載車で充分だと思っています。VESC、FOCBOX unityを使うのは、市販の完成品では満足できなくなった場合です。
「FOCBOX unityは自分に合わせてセットアップできるんだろう?」
たしかにそのとおりですが、ホビーウイングESCと同等程度のパワーに抑えて乗るには重くてオーバースペック気味になります。
FOCBOX unityを使う
自作マシンの要、出力を自在に操れ、扱いやすいFOCBOX unityをつかってみよう。
❶・・USB-タイプC・・PCと接続し、Windows版FOCBOX UIおよびTOOLで設定するときに使う。iOSユーザーはこれを使わないとモーターのキャリブレーションができない。Androidユーザーとあまりにも差がありすぎる・・・
❷・・CAN・・もうひとつのFOCBOX unityと接続して4wdにするときに繋ぐ4ピンのコネクタ。2wdなら不要。またはMetr Pro Canと繋ぐときに使う。
❸・・COMM・・Bluetoothモジュールを繋ぐ7ピンコネクタ。Androidユーザーはとくに使うことがない。AndroidアプリとUnity内蔵のBluetoothを接続できるからである。
現状ではiOSユーザーはここにBluetoothモジュールを挿して別のアプリで通信をする必要がある。iOSには純正アプリがなく、内蔵Bluetoothとも連携を取れないからである。しかしこれで連携を取れても使える機能は限定的である。いまはiOSでモーターのキャリブレーションは出来ない。iOSユーザーの場合は「metr」を使うことを強くオススメする。キャリブレーションこそ出来ないが、アプリを通じてバッテリー残量やスピード、走行距離などを見ることが可能になる。出力やブレーキの数値的な調整なら可能だ。
もちろんAndroidユーザーにもオススメ。
❹・・Switch・・付属の電源ボタンを繋ぐ。
❺・・SERVO・・リモコンの受信機を繋ぐ3ピンコネクタ。DIY電動スケートボード用のリモコンを買うと受信機がセットで付属するのでそれを使う。
❻・・HALL・・モーターのセンサーケーブル6ピンを挿す。2mmピッチのph-6ピンだが、モーター側は1.5mmピッチのzhだったり、そもそもセンサーケーブルがないモーターのパターンもある。(センサーレスBLDCモーター)
コネクタのサイズが違えば変換する必要がある。はじめからphコネクタ付きのモーターを買うのもひとつの手。(例:Bioboardsのモーター)
❼・・モーターケーブル・・Amass3.5mm先割れタイプのコネクターと適合する。これもモーターと合わなければ変換が必要。なお3本のケーブルの挿す順番はどうでもいい。
※Massive StatorやBKB ZenithのモーターコネクターはMT60コネクタに変更されている。
❽・・XT60バッテリーコネクタ・・直接これにバッテリーを接続する
❾・・AUX・・ここに電圧残量計を接続する。スマホでも残量確認ができるので使わなくても構わないが、電圧残量計があるとものすごく便利。
必ず挿すのは❹❺❼❽、センサー付きモーターなら❻も挿す。センサー付きモーターは静かで滑らかな回転になるのでオススメ。
これで準備OK!❹に挿したボタンを押して電源を入れてみよう。そしてAndroidアプリを起動してみよう。なおPCでも設定できるので、その場合はUSBタイプCで接続する。
↑ Androidならconnect Bluetoothで接続。PCならconnect USBで接続。接続したら青円のconfigへ。
BATTERY LIMITS
↑赤円のSERIES CELLSを決める。使用するバッテリーの直列数のこと。使う本人がこれをわからないのでは話が進まない。その右隣にあるCUTOFF START、CUTOFF ENDは、「パワーをカットし始める開始電圧」、「走りをシャットダウンする電圧」のこと。
CUTOFF STARTは3.4V × 直列数
CUTOFF ENDは3.1V × 直列数
これはデフォルト値であり、直列数を決めれば上記の公式に従い自動で決まる。いちおう任意の数値に変更することも可能だ。これがBMSとは別に、電圧低下時にバッテリーを保護するFOCBOX unityの安全機能である。
青矢印の上のほう、「MAX BATTERY DISCHARGE CURRENT」はズバリそのまま加速力・トルクを決める数値。スライダーを動かして数値を決める。はじめは20Aあたりから始めて、走りながら自分の好みに合わせて変えていくとよいだろう。ただし「バッテリーパックの最大放電力を越えた数値はNG!(BMS放電ならその最大放電電流を越えてもNG!)」
おそらく最もヒューマンエラーを起こしやすいのはこの項目。ヒューズを入れていないボードで間違えて (例えばMAX MOTOR CURRENTと勘違いする等 )大きな数値を入力してしまった場合、バッテリーパック次第ではスロットルオンでセルを損傷したりバッテリーの配線が焼けたりする可能性がある。
これは使用するセルにもよるが、1並列あたり10Aくらいを最大値の目安にするとよいだろう。2pなら20A、3pなら30A・・くらいが上限として問題を起こしにくい数値という感じである。「2pで20Aの加速じゃ物足りないよ」というのであれば、3p、4pと並列の多いバッテリーに変えるしかない。もしくは良いセルを使う。30Q、VTC5、VTC6、40T、モリセルP42A、50Sあたりが良いだろう。
なおこの数値が大きいほど加速が鋭くなり、キツめの坂道も上れるようになるが、(モーターの性能、ギヤ比やKV値、最大ワット数にも依存する)同時に電費(燃費)も悪くなる。
もうひとつの注意点として、バッテリーで使用しているケーブルの許容電流を越えてもダメという点。自作用データベース(電気系統編)を参考に、バッテリーを自作するならば、ケーブルやコネクタの許容電流に関しては余裕を持ったものを使うと良いだろう。これは上記の大文字で記述したトラブルの予防にもなる。
BMSに関しては放電バイパスならケーブルやコネクタの許容電流さえ気にしていれば問題ない。BMS放電ならそのBMSの最大放電電流を越えるとシャットダウンされる危険性がある。
↑ 30Qひとつあたり15Aの放電カーブ。4pなら60A。はっきり言って異常な加速力であり電圧も一気に落ちる。こういう使い方はあまりしたくないものだ。
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その下のもう1つの青矢印の「MAX BRAKING REGEN CURRENT」はブレーキをかけた時の回生電流を決める数値。ハイブリッドカーやEVのブレーキのようにブレーキ時にモーターからバッテリーへ戻って充電する電流。これは以下のリンク先が参考になる。
https://www.electric-skateboard.builders/t/how-to-safely-calculate-max-regen-current/89008
自作用データベース(バッテリーセル編を参考に、各種類のバッテリーセルには充電電流がバッテリーセルのメーカー公称値として決められているのでそれを基準にする。
Samsung30Qのstandard charge current(標準充電電流)は1.5A。これに並列の数を掛けると4pなら1.5A×4p= -6A。
Fast charge current(急速充電電流、継続的に可能である最大充電電流)は4Aなので、これに並列数を掛けると4pなら4A×4p= -16A。
先ほどのリンク先によれば、充電器での充電と違い、あくまでブレーキを掛けている限られた時間内での充電電流なので、もうすこし数値を強くしてもおそらく問題はないという。(保証は無いが)
この場合・・・
P数×セルの最大充電電流×1.5 / vescの数(unityの場合は1、つまり割る必要はない)
4p × 4A × 1.5 =24
計算上は-24Aまでは許容範囲である。
さらに上のリンク先によればRaptor2.1の30Q10s4pで、-30Aはデフォルトで容認されている数値だという。-24Aからもう少し上乗せしても良いという。
30Qの4pならこの-6A〜-30Aの範囲で実際の高速走行時のブレーキと相談しながら決めると良いだろう。
また以上のことからバッテリーパックの並列数が多いほど、なおかつ許容電流の大きいケーブルを使っているほど、強い数値を使えるということになる。
MOTOR CALIBLATION
FOCBOX unityの真骨頂ともいえるモーターキャリブレーション。過去のVESCと違い、この工程が格段に楽になった。まずは赤円のStart Testをクリックすると、モーターがけっこう大きい音で「ブーーー!」と2秒程度唸る。
そのあとにダイアログが出るので左右のウィールを両方そこそこ勢いよく進行方向に手動で回そう。これは遠慮がちに回すと失敗しやすい。シャッと遠慮なくてで回す。緑円の部分が両方とも薄緑色になればモーターの検知は完了となる。もし片方でも薄いオレンジ色になったら失敗だ。なにかしらの原因がある。6ピンのセンサーケーブルが断線してるとか、リモコンからなにか余計な信号を拾っているか、手で回すスピードが遅いなど・・・
黄色円をクリックすると、モーターの回転を左右それぞれ逆にできる。
次は青矢印の「MAX MOTOR CURRENT」の設定。
これはモーターを販売しているメーカーごとに公表されている最大電流をそのまま入力すれば良い。
↑ これはTorqueboardsで販売している6355モーター。なんと80Aまで使える強力なモーターだ。
↑ これはMeepoで売ってるハブモーター。12A。定格36Vで432Wのパワーを出す。40km/h近く出る必要充分なパワーだ。
しかし、これらにはいくつか気になる点もある。例えばTorqueboardsの6355モーターは3100Wと書いてある。3100 ÷ 80 = 38.75。これは10sの定格に近い数値。
では12s定格43.2Vだとどうか?
80A × 43.2V = 3456W
モーターの公称最大出力を超えてしまうのだ。さらに言えば、12s満充電50.4Vだと
80A × 50.4V = 4032W
モーターの公称最大出力を大幅に超えてしまう。(実際は走り出せば電圧がある程度落ちるが)
では60A程度に抑えてみよう。
60A × 50.4V = 3024W
モーターの公称最大出力3100Wにかなり近いた。保守的にいくならこれくらいが良いかもしれない。はっきり言って3000Wもあれば過剰とも言えるパワーである。80Aを試すなら、以下のMeepoモーターのように試す。
Meepoの12Aはどうか?両輪なら合計24A。はっきり言って十分にパワーがある。そこからさらに標準のESCからFOCBOX Unityに載せ替えてパワーアップを果たすことが可能である。
「12A以上に設定したら定格432Wを越えちゃうでしょ?」
そこで12Aから少しずつ数値を上げて試してみる。そして実際に走ってみてモーターの熱を確認してみるのだ。これで触れないくらい熱くなったら数値の上げすぎでなので数値を下げていく。これでモーターの限界を見極める。ターボ車のブーストアップのような要領で、探りながらモーターの限界を引き上げていく感じだ。
完成市販車のESCと交換してパワーアップを楽しめるのもFOCBOX Unity(VESC)の面白さだろう。
基本的にはメーカーの公称最大電流を入力しておけば問題はない。
次の下の青矢印の「MAX BRAKE CURRENT」の設定。これは基本的に先ほどのMAX MOTOR CURRENTのマイナス値をそのまま入れれば良いだろう。そして実際に走ってみてブレーキをかけてみる。そして数値を越えない範囲で好みのブレーキになるように調整すれば良い。このブレーキ加減は意外にもウィールサイズやギヤ比による影響が大きい。大きいウィールだとブレーキはマイルドになり、小さいウィールほど小さい数値でそれなりにブレーキが効く感じだ。
ほとんどのケースで数値を減らす方がちょうど良い感じになると思う。MAX MOTOR CURRENT 80Aに対して、MAX BRAKE CURRENTは-60A、みたいなイメージだ。
好みにもよるが管理人の感覚だと-30Aあたりをベースにあとは好みで増減させればちょうどいいブレーキ加減を決められると思う。
あとはアプリ画面右上の「Apply Updated Config」をクリックすれば、今まで設定したデータがFOCBOX Unityに書き込まれる。この「Apply Updated Config」のクリックは基本動作であり、これをやらないと設定データがボードに反映されないので覚えておこう。
続きは