リバース(Reverse)

リバースとは日本人に馴染み深い言葉で言えばバックにあたる。後退。

電動スケボーにおいて、長らく(?)リバース機能というのは軽んじられてきたというか、必要がない機能だという意見が多かった。あのEvolve GTシリーズもかつてはリモコンのボタンによるフォワード・リバースの切り替え機能を搭載していたが、ボタンの誤操作による事故やら怪我人やら出てきて途中で止めたほどだ。

しかしVESCのファームウェアの進化により、このリバース機能が再び脚光を浴び始めている。

ただし後退の機能としてではなく。

「わけわかんねーな」という感じになるだろうから説明していく。かなり以前からACK maniacというVESCの本家ではないカスタムファームウェアには安全なリバース機能が実装されていたのだが、最近は本家VESCファームウェアにも使えるようになってきている。

VESCのppm設定において、「Current No Reverse With Brake」という、「ブレーキは掛けられるけどリバースしないよ」という機能がメインだった。FOCBOX Unityにもリモートコンフィグのppmモードにおいて、「Forward/Brake」という項目がそれにあたる。ブレーキをかけて、止まるとリモコンのトリガーをブレーキ側に引き続けていたとしても、そのまま止まっているだけだ。アクセルオンにすれば再び前に走り出す。

もうひとつ、FOCBOX Unityには「Forward/Reverse」という項目がある。しかしこれはリモコンのブレーキトリガーを最大に引いて減速し、停止したとき、今度はそのトリガーが最大のまま後退をし始めてかなり危険だということであまり使われてこなかった。このモードは止まりたいなら止まった瞬間にトリガーをニュートラルに戻す必要がある。ボケッとトリガーをブレーキ側に入れたままだとけっこうな勢いで後ろに走り始める。VESCのppmモードで言えば「Current」がこれにあたる。

リバースするのは良いけど、そんなに勢いよく後退するんじゃ危ないよということで、最近のVESCファームウェアでは後退の速度に制限を掛けられるようになっている。

では後退の機能として期待してないのに、なぜリバースが重要になるのか?ふたつ理由がある。

①下り坂で停止できる

かなりデカいメリットだ。後退することにより、重力で下るチカラと後退機能による上るチカラの吊りあいをとって、下り坂の途中で止まることが可能になる。

②ダイレクトドライブで停止できる

ダイレクトドライブはギヤドライブやベルトドライブと違い、きっちりビタッと止まることができないと言われてきた。ブレーキが効かないというと少し語弊があり、高速〜中速ではしっかり減速する。問題は3〜4km/h程度まで減速した時だ。そこから先のブレーキ入力が無視される感じになる。転がりのよいダイレクトドライブと相まってダラダラと進んで一向に止まらない。これはいざという時にかなり危ない。また下り坂ではブレーキどころか止まらず、むしろ加速するほどである。このような現象に対してリバースで相殺して止まることが可能になる。

こんなメリットがあるよ、ということで以下に設定方法を記載していくが、「metr」装着を前提として書いていく。metrはAndroid、iOS、両方に使えるのでオススメだ。そしてFOCBOX UnityのAndroidアプリでは不可能でもmetrがあればこの設定が可能というのもポイントだ。

esk8 newsのフォーラムから得た情報なのだが、私なりの書き方で説明する。

↑ metrとボードをBluetoothで接続してエキスパートを選択する。エキスパートはマニアックな設定をする時に使う機能だ。

↑ これがエキスパートモード。設定項目がひたすらに並んでおり、ハッキリ言ってわけがわからない。しかしこのエキスパートモードの使い方は検索機能にある。1番上の検索入力に「ppm」と入力すると、ppmに関連した項目がズラリと並ぶようになる。

↑ 検索入力に「ppm」と入れるとこのような画面になる。

一番上に大事な「[PPM] Control Type」が出てくるので「Current」を選択して、画面下の「Write」でVESCに設定を書き込む。これで停止時にブレーキ側にトリガーを引くとリバースするようになったはずだ。

次にリバースの速度制限を設定する。

↑ metrを使ううえで、かなり使用頻度が高いであろう「Modes」を選択する。

↑ これは私が設定した2つのモードであるが、どちらでも良いのでタップしてみる。ようはモードの設定に入るのだ。

↑ モード設定に入り、上のほうにある「Maximum Speed」を見る。これは最高速度の制限。画像では40km/hに設定しているのだが、バッテリーやモーターの項目をしっかり設定してあれば、正確なerpmがそこに表示されている。画像では39177erpmだ。

↑ もし、バッテリー設定や、ギヤ比やウィールサイズ、モーター極数などを設定していないならこの「Setting」から設定しておこう。これをやらないと正確な速度制限ができないし、スピード表示も正確に計測されない。そもそもmetrを使う意味がなくなる。

↑ 話が戻り、私の改造AE2の設定ではモータープーリーが13T、ドライブプーリーが36T、モーターはFlipskyのアウトランナーモーターなので14poles、ウィールサイズは105mm。バッテリーはリチウム イオンの10s。これで40km/hの場合、erpmは39177erpm。

つまり、1/10の速度、時速4km/hだとerpmも1/10の3917erpmということだ。これをとりあえずリバースの制限速度としてみる。

↑ モード画面の下、Add more parametersのプラスマークをタップすると設定項目を増やせる。そこでMax ERPM Reverseという項目を追加する。これが後退速度の制限設定であり、ここにさきほどの「-3917」を入力する。そのあとCloseをタップして1つ前のモード選択画面に戻る。

↑ さきほどのモード画面で、適用したいモードを左から右にスワイプする。

↑ スワイプするとこのような画面になってVESC(またはFOCBOX Unity)に設定が書き込みされる。

これでブレーキを掛けて止まってからそのままトリガーをブレーキ側に引いたままにすると、今度は速度制限つきで後退するようになる。4km/hでも速いと感じたら、さきほどのMax ERPM Reverse項目のerpm数値を変更すれば良い。

VESCはもちろん、FOCBOX Unityのアプリでは出来ない設定をmetrなら使えるというのはとても大きい。Android、iOSのどちらでも使えるのも大きい。

私はこの機能を使ってトルクボードのダイレクトドライブを近々復活させようと思っている。しっかり止まれるならダイレクトドライブは大いにアリだからだ。

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