どうなる?Enertion?

ラプター2で一時代を築いたEnertionがいよいよ終わるのか?という事態になっている。公式HPではもう何も販売していない。FOCBOX UnityだけはAmazon.comへのリンクが貼られているが、そのAmazon.comでも在庫切れという状態だ。

なぜこのような事態になったのか?

Enertionは2015年頃はパーツ販売をメインにラプター1を小ロットで販売していた。ラプター1はカーボンユニボディデッキにサムスン25Rセルの10s3p270Whバッテリー、通称「スペースセルバッテリー」を搭載していた。

使っているモーターは6355のセンサードモーターにベルトドライブ。当時は先進的な装備だった。いまの中華ボードに匹敵するスペックを4年前に実現していた。当時は初代Boosted boardsが注目と称賛を浴びていた時代。

99WhのBoostedを「悲惨な走行距離」と切り捨て、DIYerは「自作の方が良い」という自信を持っていた時代。しかしDIYもまだ模索も模索という段階だったのだ。

そしていよいよEnertionはラプター2の開発に舵を切る。ニッチでマニアな自作の世界では儲からん、みんなが求めているのは完成品なんだ、DIYのハイスペックを完成品として生産し、誰でも買ってすぐに乗れるボードを!・・・ということで先行予約やキックスターターなどで資金を集める。

ラプター1からガラリと変わってラプター2はカーボンユニボディデッキをやめて木のデッキに回帰した。エンクロージャーおよびバッテリーは別体となる。モジュール性を重視して、バッテリーとESCをエンクロージャーごとユーザーの好みのデッキにスワップできるコンセプトだ。キックテール付きの標準デッキは必ずしもユーザーの好みではないということで、これを簡単に交換できるようにした。

モーターはハブモーターだ。この選択がある意味、今日の没落のトリガーとなってしまった。専用のアウトウィールを必要とし、交換が恐ろしく面倒だった。乗り心地も悪い。

しかしラプター2は2018年ベストエレクトリックスケートボードとしての評価を得る。50km/hの最高速を達成し、FOCBOXによるコントロール性も良かった。ここまでは状況はさほど悪くなかった。

内部的にはラプター2は中国で生産しており、その生産管理にかなり苦慮していたようだ。「パッケージの箱の強度が悪いので作り直す、2週間ほど製品の発送が遅延します」という冗談みたいな事があったりした。

実際にラプター2を分解すると大量生産には向かない設計が所々で散見された。良くも悪くもDIYの延長だったのだ。これでは生産スピードも上がらない。ついには中国の生産チームを解散してしまう。その時にかなり揉めたようだ。

そして新しいチームでラプター2.1の開発・販売を始める。これがEnertionの息の根を止めることになる。

2.1を名乗り、パッと見は2.0と似ているが中身は完全に別物だ。生産性を上げるために所々で細かい設計変更がされていた。

モーターは完全なる新設計。ハンガーの中に銅のヒートパイプを通して放熱性を高めた・・・とされるがこれがほぼ機能せずハブモーターの特性と合わせて放熱性は最低だった。その熱の影響か、ウィールのウレタンは1〜2回走るだけでボロボロにヒビ割れて崩れるのである。12直列、最大40A、デュアルで総出力4000Wという触れ込みだったが、とてもそんな設定で使えることはなかった。

ESCはこれまた新開発のFOCBOX Unityだ。これだけが唯一の良心、唯一のメリット。しかしいくらESCが良くてもドライブがゴミなら完成品のボードは成立しない。発送が遅い、注文してから散々待って届いた製品はほぼ不良品レベル。信用は落ちていく。

そして今日の事態となる。会社を精算したInboard社との共通点はハブモーターであり、オール自社設計という部分である。「ベルトドライブなんて時代遅れだよ」などと言われていた時期もあったが、ベルトドライブを堅持したBoostedEvolveは今でも経営を続けているし、Evolveは来年2020年には日本に支店を構えるほどだ。

なお、Boosted2020年に入ってから経営が傾いている。

ハブモーターは今日、安いコスパ重視のボードという位置づけに収まっている。ハブモーターは熱に弱く、乗り心地が悪いという欠点を克服できなかった。ラプター2.1は電動スケボー におけるハブモーターの欠点を世に広めてしまった。他社はベルトドライブ、ダイレクトドライブ、ギヤドライブ へと舵を切ることになる。中華ボードもベルトやダイレクトを出し始めている。

全てを自社で設計するのもリスク分散の観点から難しいと考えさせられる。新開発ならなおさらだ。Inboard M1は、部品の交換やカスタムもままならない、煮ても焼いても食えない独自設計の塊で、時代から取り残されて消えた。

FOCBOX Unityだけはまだ生産を続けるのか?これの灯火が消えるのはあまりにもツライ。誰でも簡単に扱え、大パワーにも対応できる素晴らしいESCだからだ。

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