2台のATベルトドライブ、そしてATとベルトを語る

↑ 久々に友人とツーリングをした。夕方、まだ明るいうちにスタート、そして談義休憩をちょいちょいはさみ、その後に日が落ちても走り続けた。40km以上は走っただろう。

3灯ライトのボードが友人のボードであり、ランドヤッツEvoデッキ、バッテリーはサムスン50E12s8p1728Wh、Flipskyのダブルキングピンベルトドライブに、惜しまれつつも消えたhaggyの6インチタイヤ用ホイールを自前の工夫で搭載、そのホイールにアリエクの謎タイヤを履かせたATボード。友人もまた、ハブモーター、ダイレクトドライブを経てベルトドライブ&ATにたどり着いた電動スケボーユーザーの模範的な経緯を辿った者である。

電動スケボー談義のなかで話題になるのは

「ハブモーター、ダメっすわ。」

「ダイレクト(ドライブ)も結局ダメっすわ。」

という内容。ただ、全てがダメと言うわけではない。ハブモーター、ダイレクトは自作を始めるにあたり非常に敷居が低く導入しやすい。ベルトは意外にも難易度が高い。まずはハブモーター、ダイレクトドライブから自作を始めるのは悪くない。届いたドライブをポン付けするだけだ。

静粛性も良い。ハブモーターとダイレクトドライブは基本的に静かだ。舗装の綺麗なところでコッソリ乗るなら良いだろう。そしてベルトやギヤドライブよりもコストは安い。

しかし乗れば乗るほどハブモーターやダイレクトドライブの欠点を思い知ることになる。トルクがない、熱に弱い、そして乗り心地が悪い。いずれもかつては電動スケボーユーザーの視線を集め次世代の電動スケボー(のドライブ)などともてはやされた時期もあった。しかし今ではその勢いは衰えつつある。

最近の(2021.9月)中華ATもbackfireハマー、Meepoハリケーンなど、ハブモーター機をメイン商品にしていたメーカーすらも結局ベルトに移行しつつあることが分かる。タイヤも空気チューブ式が良いよね、みたいな風潮だ。結局のところ楽しくストレスの無い快適な乗車体験をユーザーは求めているのだと思う。

ベルトのメリットは、モーターの冷却性、ギヤ比の選択の自由、乗り心地の良さ、トルク感、カスタム性だ。

自作におけるベルト導入の難易度の高さは、ベルトの長さやら規格やら何やらよくわからん、という部分だろう。むしろそんな事は知らないまま乗っている人が大半だろう。完成品に乗るだけなら実際に困ることもない。メーカーがスペアパーツとして売っているベルトを買えばそのまま使えるし。

しかしいざ自作となると、よく分からんという事になる。どのベルトを買えばいいの?長さは?規格は?幅は?という疑問にブチ当たり、パーツを揃えてドライブを組むなると意外と値が張る。ハブモーターより遥かに高額になる。

ベルトの長さの疑問に関してはこちらを参照

組むのも面倒だ。ベルトで初心者が意外とブチ当たる疑問のひとつに「ベルトの張り具合はどの程度が適正?」問題がある。これに関しては「まず、あまり張り過ぎるな」というのがひとつ。張りすぎるとかえって抵抗となり電費は落ちるわ、フリーロール(アクセルオフによる惰性の転がり)は悪くなるわ、モーター自体も熱を持ちやすくなる等の不具合がでてくる。ベアリングにも良くない。ベルトの歯飛びを恐れて張りすぎるとかえって状態を悪化させるのだ。ベルトの張りすぎは最大の悪行であり愚行である。

かと言って緩めすぎれば当然歯飛びする。じゃあどれくらいが適正なのよ?と。答えは

「歯飛びしない程度に張れ、ただしビンビンに張りすぎるな。」「タイヤ(ウィール)を直接手で回して回転が重いと感じたらそれはベルトの張りすぎだ。」という曖昧な回答である。かつて有名なboosted boardsはHTD-3Mという3mmピッチのベルト&プーリーを採用していたが、近年では殆どのメーカーが5M(5mmピッチ)のベルトを採用している。5Mは歯が大きく、少し張りが緩い程度でもそこまで歯飛びしない。そんなに張り具合に対して神経質にならなくても良いですよ、と。

ベルトに関してはもうひとつ、アイドラー付きのドライブについて。

↑ ドライブプーリーとモータープーリーの途中にベルトを押さえつけるような転がる部品。アイドラーとかテンショナーなどと言われる部品。電動スケボーの場合、厳密にはアイドラーとなる。アイドラーとテンショナーの違いは自分で調べてください。

電動スケボーにおけるアイドラーの役目はプーリーに対してベルトが巻きつく面積(巻きつく歯数)を増やして歯飛びを防ぐというメリットがある。「そのぶん、転がり抵抗が増えるんじゃねえの?」と思いがちなのだが、巻きつき量が増えて歯飛びのリスクが減るので、そこまでベルトを強く張る必要がないゆえ抵抗が減って意外にも悪くないのだ。今回、ENDEAVOR Proに乗って得た私の結論だ。

ATに関してはまずメリットとして走れるステージが格段に増えますよ、と。今回のツーリングではボコボコのアスファルトや林道も含まれておりATならそれらを走り抜けることができる。ストリートウィールなら我慢してストレスを感じながら走るとかその場所の通過を諦めることになる。

そして快適性。今までストリートウィールなら気にしていた荒れたアスファルト、ヒビ割れ、段差、これらが殆ど気にならなくなる。余計な神経を使わずに突っ込める。これらはナイトランにおいて実はかなりのメリットになる。夜間における視認性の悪さからヒビ割れやら小石を見落としてもATなら結果としてどうにかなるからだ。ストリートウィールでそれらを見落としたら運が悪ければ転んで大惨事、大惨事にならなくとも不快な衝撃や振動でストレスを感じるだろう。精神衛生上にも良くない。

ATなら綺麗な路面でもメリットがある。横Gを強く感じるコーナリングにおいてもATのゴムタイヤは食いつきが良く、結果としてコーナリングスピードが上がる。ウレタンのストリートウィールだとズルっと横滑りしそうなシチュエーションでもATのゴムタイヤなら結構踏ん張れるのだ。大きなUターンみたいな時に実感できる。これがまた楽しさとなる。

ATのタイヤは空気入れが必須となる。今までの経験上、AT初心者はバルブの規格や空気圧に関して知らないケースが多い気がする。

まずバルブは米式だ。知らない人は「は?いきなり何?」と思われるかもしれないが、とりあえず電動スケボーの空気入れにおけるバルブは米式バルブだと頭に叩き込んでください。

推奨空気圧はタイヤの側面に刻印してある。「◯ber」「◯psi」というのがそれだ。指定はだいたい40〜60psiくらいである。好みに合わせて多少増減しても問題ない。

↑ 他所様から転載。berとpsiの換算表。4.1berなら60psiである。

つまり空気入れを買うなら空気圧が分かるタイプでなおかつ米式バルブの物を買いなさいということである。今ではバッテリー搭載の電動空気入れも売っている。

タイヤの大きさに関しては6、7、8インチ、場合によっては9、10インチもあるが9、10インチは少し特殊だ。メインは6、7、8インチである。電動スケボーのタイヤにおけるインチはタイヤそのものの直径を指す。8インチなら掛ける25倍でおおよそ直径200mmのタイヤ、6インチなら150mm、7インチなら175mmである。これらはVESCのタイヤ径の設定において必要な知識となる。

まず市販の完成品ATボードは6、7インチが多い。8インチ搭載ボードは完成品ではまだ少なく、あっても高額なボードだ。マウンテンボード由来(トラック)だと8インチが多い。インチが大きいほど走破性が高いと言って良いだろう。

6、7インチは実はタイヤの流通性に多少難がある。思いの外販売網や選択肢が少ない。メーカーのサイトから買うことになるケースが多くなるだろう。8インチはアリエク等でいくらでも見つかる。8インチはマウンテンボードの標準でもあり、選択肢は多い。200 × 50などと記載されているタイヤは8インチである。

8インチは6、7インチと比較して走破性だけでなく耐摩耗性においてもメリットがある。単純にタイヤ一周で走れる距離が6、7インチより多い。8インチと6インチ、同じタイヤのゴム材質ならば理論上は8インチのほうが33.3%ほどの距離分、寿命が長いということになる。また同じスピードならば6インチは8インチよりタイヤが1.33倍程度、高速回転することになるのでより負荷が掛かる。おそらく大半のユーザーにとって6インチはけっこう摩耗が早く感じることだろう。

パンクの修理においても6インチは少し難しい。チューブが小さすぎてゴムパッチを貼りづらいのだ。チューブ自体そんなに値段の高いものでもないので修理するよりチューブを買い置きして交換する方がてっとり早いだろう。

タイヤのインチでベアリングも変わってくる。厳密に言うとホイール(ハブと表現する)やアクスルシャフトの径が違う。6〜7インチは608zzという規格が主流である。これは内径(穴)8mm、外径22mm、幅8mmのベアリング。通常のスケボーで使用されるベアリングもこれである。つまりこれらは8mmのアクスルシャフトということになる。

8インチタイヤだと6001zzという内径(穴)12mm、外径28mm、幅は8mmのベアリングが主流である。これはマウンテンボードと同じ規格のベアリングだ。これらは12mmのアクスルシャフト。

いずれもzzとは両面シールド付きであることを示す記号。買うならシールド付きだ。

スケボー(電動ではない方)をやる人はABEC5やらABEC7やら、転がりの精度や品質を示すABECというベアリングの規格に拘るかもしれないが、私の個人的な意見として電動はそこまで拘る必要が無いと思っている。防塵シールド付きなら何でも良いよ、というのが私の意見だ。電動においてABEC〜というのは些細な事であると。608、6001、いずれにせよ電動スケボーの場合、両面シールド付きであれば工業用でも問題ない。

今回はベルトやATに関する、初心者がはじめは疑問にも思わない細かい点について書いてみた。またこのブログでしつこく書いているが、いま電動スケボーを買うならベルトドライブでバッテリー容量多めのATがオススメです。