DIY電動マウンテンボード

最近は忙しいことが重なりすぎてなかなかボードを作れなかったのだが、ようやく一台作れる運びとなった。たまたま重量バランスが釣り合ったのか、画像のようにこんな感じでボードが立つ。依頼品。お待たせして申し訳ありませんでした。

デッキは預かったMBSデッキ、バッテリーはサムスン40T12s3pとFlexi BMS、エンクロージャーはeboostedのe-MTBユニバーサルエンクロージャー、ドライブはFlipskyのマウンテンボードドライブと8インチタイヤ、ESCはFOCBOX Unityでファームウェアは23.46。

今回のボードも一筋縄とはいかず困難の連続・・

まずデッキに合うエンクロージャーの選定から始まったのだが、3Dプリンターによるエンクロージャー製作は失敗に終わった。耐久性の問題、制作時間やコストの問題によりこれは頓挫した。次に出た案は冒頭のeboostedエンクロージャーの採用だが、デッキに合うものがeMTBユニバーサルエンクロージャーだった・・・が、これが18650時代の設計ゆえ深さが足りない。結局エンクロージャーライザーを3Dプリンターで作った。

↑ TPUフィラメントで印刷。これで深さを稼いで21700を入れる。バッテリーには衝撃や振動からのダメージを軽減するためにスポンジを貼るのだがその分も含めてこのライザーで14mm深さを増やした。

バッテリー自体も12sまで入れるとBMSを入れるスペースが無い。そこでFlexi BMS(画像の青く囲んだ基板)の出番だ。超コンパクトなBMSでスペースをどうにか捻出する。FOCBOX Unityはギリギリまで後端に寄せて配置。

↑ Flipskyのマウンテンボードトラックを取り付ける時にはベースプレートとデッキの間にこのライザーパッドを挟む。これを入れ忘れると小回りが効かなくなる。私はやらかした。コレがないとコーナリングが大回りになる。

ここからは完成した電動マウンテンボードを試走し、電動マウンテンボードとはどんなものか?ということを通常(?)のロングボードデッキに慣れている者の視点から率直な感想を書く。まずマウンテンボードデッキ独特の真ん中が盛り上がり前後が下がっているアーチ状の形状について。これは長時間乗ると足の裏の土踏まずが少し痛いというか違和感を感じるようになった。ランドヤッツやEvolveのようなクルージング、レーシングタイプのデッキに慣れた脚には想像以上に違和感を感じた。

またコンケーブが無いのもコーナリングで地味に違和感を覚えた。コーナーでの踏ん張りが効かないのでついチカラが入る。マウンテンボードデッキというのはビンディングと合わせて3次元的アクションで真価を発揮するデザインであり、クルージングやツーリングの用途のためにデザインされたものではないということだろう。

↑ 上はFlux motion、下はLacroix。これらは大容量バッテリー搭載の電動マウンテンボードであり、トラックもマウンテンボードトラックを採用しているがデッキは弧を描くアーチ状ではなく意外にもフラット気味だ。Lacroixに至ってはしっかりコンケーブもある。なるほどね、というデザイン。大容量バッテリー搭載である以上は長時間長距離で疲れるとか足に違和感を覚えるデザイン形状は好ましくなく、また大容量バッテリー搭載ゆえに重たいので派手なアクションをすることもない。ロングライドにおいて、あえてガチなマウンテンボードデッキではない、このオリジナルなデッキデザインは理に適っているわけだ。

Kaly.nycの最新型XL-Rも同様で、過去の製品はアーチ形状の際立つマウンテンボードデッキだったがXL-Rではマウンテンボード風味ながらもフラットなタイプでなおかつコンケーブのあるデッキデザインに変貌している。これは地味かつ気付きにくいながらも大きな変更点だ。Kaly.nycは超絶高価ではあるが、もし買うのならばやはりXL-Rが良いだろう。ロングライドに適している。このデッキ形状の差はあまりにも大きい。

次にFlipskyのマウンテンドライブはどんなものか?ということについては「$300以下でこれなら充分でしょう!」というものだった。パワフルにしっかりと走る。その他メリット、そしてデメリットを以下に述べる。

まずスプリングの硬さは調整できない。体重60kg以下の人だと硬すぎるかな?という印象を持った。70〜80kgでぼちぼち、90kg以上だとちょっと想像がつかないけど、どうにかいけるかな?という個人的な感覚だ。

タイヤ空気圧は60psi(4.1bar)が指定だったが、これだと少し硬い印象を持った。乗り心地優先ならもう少し空気圧を落としても良いだろう。

12sバッテリー、デュアル25A出力で充分なパワーと加速を得られるが、思ったよりアクセルの開け始めの出足はマイルドだと思った。ランピングタイムやら細かいこと無しに吊るしのVESC設定でそれなりに違和感なく動かせる。

ドライブの音は意外にも静かだった。これなら夜中の駐車場で遊んでも迷惑は掛からないであろうという音量だ。グレーチングの上を走ってもデカい音は鳴らない。グレーチング上をストリートウィールで走ったら振動とともに喧しい音が出るのは避けられない。

代表的なマウンテンボードトラックであるMBSメタルマトリクスⅡ、そしてMBSロックスターハブ(いわゆるホイール)とは互換性がない。今回のFlipskyのドライブとはアクスルシャフトの径が違う。Flipskyは10φ、メタルマトリクスⅡは12φだ。つまりベアリングも違う。

ベアリング、MBSは外径28φ内径12φ。Flipskyは外径30φ内径10φ。「じゃあ外径28φ内径10φのベアリングを用意すればロックスターハブ使えるんじゃね?」と思ったが、その規格のベアリングが存在しないこともわかった。いずれにせよ8インチタイヤを履くにはストリートタイプの8φのアクスルシャフトとベアリングの内径では心許ない印象があるのも否めない。10φ、12φは妥当な太さだとも思う。

あと45km/hくらいの速度になるとユラユラと揺れ始めてウォブル気味になる。あまりスピードは出さないほうがいいだろう。

いろいろ細々と書いたが、荒れたアスファルト程度ならなにも不安なく突っ込めるのはストリートウィールにはない強力なメリットだ。安価、スピードは出しません、乗り心地良く道を選ばず走りたい。この条件ならとても良い選択肢になるだろう。欧米のマウンテンボード電動ドライブは10万円コース、下手したらモーター込みで15万にも届く。それを考えればモーター込みで$275(約3万円)は破格だ。夏の早朝、25A(片方12.5A)出力で温度は40℃程度。そう、モーターには温度センサー付きなうえに熱にも余裕もあったということだ。

これに組み合わせるデッキはアグレッシブなアクションライドならマウンテンボードデッキ、ロングライドなら前後がフラットなデッキ(できればコンケーブも欲しい)をチョイスすると良いだろう。難点はそもそもこのドライブに合うデッキの入手性だろう。私はFlux motionのデッキ&エンクロージャーセットをオススメする。

このドライブ、コスパは最高です。