自作電動スケボーでちょいちょい話に出てくる「Metr」とは一体なんだ?

電動スケボーを自作するにあたり、VESCとそれに類する(VESCの規格に則った)ESCは必須とも言えるパーツ。

それをスマホで設定したり、状態を閲覧把握するためにスマホをインターフェイスとするための通信モジュールとアプリ。それらがMetrである。

バッテリーの出力、バッテリーへの回生電流、モーターの最大出力、モーターの最大ブレーキなどのVESCにおける4大設定は当然アプリから設定できる。さらにスピード(時速)から出力(モーター、バッテリー、全体のワット数)をリアルタイムに閲覧でき、走行距離の記録、さらには何処を走ったかを地図にログを残すことも出来る。その地図上にはその時に時速何キロで何ワット出力していたかを事細かにログに残して、さらにはそれを共有するためのURLを吐き出すこともできる。ガーミンなどの有名なサイクルコンピュータのような機能を内包しているのだ。

前回のTorque Boards Blue にもMetrを使っている。こんな感じの画面だが、走っている時はこれがリアルタイムに動く。この画面の文字の大きさや表示項目の選択の有無、配列などをこちらの任意に変更可能。

過去にもVESCとスマホを連携させる通信モジュールはいくつも存在した。その進化の過程の中でもはや一強と言えるまで存在価値を高めたのはMetrだと思う。はじめの頃はその他のアプリとさほど変わらない印象だったが、ファームウェアアップデートをめちゃくちゃ繰り返して機能を強化しまくってきた。私はVESC系のESC搭載自作ボードを作るたびに必ずと言っていいほどMetrを入れるほど気に入っている。

Metr ProおよびMetrアプリの徹底的ガイドのリンク。

上のリンク先におおまかな使い方が英語で書いてある。翻訳して読もう。

Metrは使い方次第では走りの質を大幅に向上させることが可能だ。

↑ 1番のポイントはスマホからパワーやブレーキを自由自在に調整できることだ。上の画像はModesの画面。

緑色の枠にカミナリマークがあるが、これはバッテリー出力関連の項目。左の赤い数値(画像では40A)がズバリ、パワーそのものを示している(Battery current Max)。白い数値(画像では-36V)はリジェネ、回生電流を示している(Battery current Max Regen)。

黄色い枠には丸いモーターのマークがある。これはモーター関連の項目だ。赤い数値(画像では60A)はモーターの最大出力(Motor current Max)。となりの白い数値(画像では-45A)はブレーキの強さ(Motor current Max Brake)。

これらの4つの設定がVESCにおける4大設定であり、走りの8〜9割はこれで決まる。そんな大事な設定をmetrではスマホでちょちょいと変更できる。

4大設定の決め方はこちらを参照。リンク先はFOCBOX Unityの説明ですが内容はほぼ同じです。リンク先の真ん中あたりから4大設定に関する記載があります。

また、自作電動スケボーのなかでは微妙な立ち位置だったリバース(後退)機能を付加できる。

リバース← 過去の投稿

アクセルやブレーキ入力の瞬間的なフィーリングを変えることもできる。

乗りやすいVESC設定とは← 過去の投稿

Metrではスロットルカーブの設定はできないが、私の結論としてはスロットルカーブの設定はほぼ不要だと思っている。バッテリー最大電流とブレーキ、あとは上記の「乗りやすいVESC設定とは」のリンク先で述べているランピングタイムとデッドバンドの設定でリモコン操作とボードの操縦性をほぼ理想どおりに設定できる。

あとは一部のBMSにも対応している。DieBieMS、Flexi BMS、LLT Powerの各BMSだ。これらは通信機能がありMetrと連携してスマホでセルバランスを見ることが出来る。

はじめはDieBieMSのみ対応だったが、放電バイパス教の入信者である私はいまいちDie BieMSへの食指は動かなかった。BMS放電を使ってこそのDieBieMSなのだが、ゆえにBMS自体のサイズも大きい。放電バイパス専用でかつコンパクト、Metrとも連携できるFlexi BMSが最近出てきて私はこれに飛びついた。Flexi BMSのほうが私の理念に合っていた。

LLT PowerのBMSにまで対応したのは大きなニュースだ。これは18sとかでも対応できる。Storm coreにより今後緩やかに13s以上の電動スケボーが出てくることは確実なのでこの対応は素晴らしい。

Metrはさらにはバッテリーの放電機能やらモーターキャリブレーションまでできる。(私は試したことがないが)

Metrの通信モジュールは2種類あり、Unity専用とそれ以外のVESC用だ。

↑ FOCBOX Unity用。FOCBOX Unityのオレンジ色のシリコンカバーをペロッとめくるとこれとそっくりな通信モジュール(純正)が挿してあるので、それと入れ替える。なお、差し込むピンを間違えると

モジュールがアッサリぶっ壊れる

ので純正モジュールを抜く前にピンの位置をしっかり覚えておこう。交換前にスマホで写真を撮るのも良いだろう。

↑ これがその他VESC用のMetr。Storm coreやFlipskyのESCのuartのコネクタに挿すことで使用できる。

どちらもアンテナ付きとアンテナ無しの2種類があるが、アンテナはカーボンデッキなど、通信電波を阻害し得るボードで使う。基本はアンテナ無しで問題ないだろう。

VESC(FOCBOX Unity)にMetrを差し込む際にはMetrモジュールに貼ってある6桁のPINコードを必ずメモしておこう。私は何台もMetrを使っているのでiPhoneのメモ機能にすべてメモしている。このPINコードが分からないと初回にスマホと通信が取れない。

Metrは多機能すぎてはじめは使い方がサッパリわからないという感じがあるが、少しずつ使っていくうちに分かってくるだろう。

「こんなこともできるのか」

「いつのまにかファームウェアアップデートでこんなことになってる」

という感じで私も使っている。VESC系のESC搭載ボードには是非とも入れたいアイテムだ。オススメです。

なお、Metr搭載ボードの電源を入れた状態でMetrアプリを開き「Settings」項目をタップ、そして「scan」を実行すると電波が届いて通信できるボード名が表示される。ボード名の左側の歯車マークをタップしたあとの画面にファームウェアアップデートを促す表示が出ていたらファームウェアをアップデートしよう。とくにMetrモジュール購入直後は中身のファームウェアが古い可能性が高い。ファームウェアが古いと最新の機能が使えない可能性がある。

もうひとつの注意点として日本語キーボードから数値を書き込むとバグる。(iPhone)

海外のアプリなので仕方ない。これはローマ字用のキーボードから書き込むとバグを回避できる。

↑ metrで設定をいじるならこのキーボードから。

↑ このキーボードから数字を打ち込んではダメ。バグって動作がおかしくなる。

↑ 電動スケボー自作ユーザー界隈では人気のあるFluxmotionの電動スケボー2ndバッチにはLLT Powerの12s20AのBMSとFOCBOX Unityが搭載されている。

放電バイパスかつ12sなので本来ならFlexi BMSを使えばもっとコンパクトに収まるだろう。しかしLLT PowerのBMSを使っているということはMetrとBMSの連携も可能だということだ。

Fluxmotionは金に糸目をつけないなら今もっともオススメできる電動スケボーであり、私のような電動スケボー変人でも認めざるを得ない究極の電動スケボーのひとつ

しかし人気があるので2020.10月現在では売り切れである。3rdバッチの登場を待とう。