スイッチ付BMSの使い道

今回はものすごくマニアックというか、大半の人にとっては退屈な話になると思う。BMSの話。

↑ こんなBMSがある。90A放電、50A充電。14s。表記の51.8Vとはリチウムポリマーの定格である3.7Vに14sを掛けた数値。私がバイオボード・プルトニウムで使う予定のBMSだ。ストームコアESCを14sでぶん回す、私史上もっとも凶悪なボード。

そしてこのBMSにはスイッチがある。BMSの電源をOFFにするためのスイッチ。これをOFFにすれば充電も放電もしませんというスイッチ。

本来ならあって然るべきのこのスイッチではあるが、電動スケボーでこれを使うのはちょっと怖い。走行中の振動とかでいきなりOFFになったら怖いでしょう・・・

「おまえ、BMS放電なんてやらないとか言ってたじゃん。

・・・と突っ込まれそうになるが、バイオボード・プルトニウムにはこのBMSを放電バイパスで使う。こんなハイスペックなBMSを放電バイパスで使う。

「なんでやねん?」

以下に説明する。今回のバイオボード・プルトニウムは走れば強烈、そしていざとなれば電源としても使えるポータブルバッテリー機能も実装する。

私の理想、究極の電動スケボーを実現するためにはこのBMSが不可欠だからだ。このBMSはポータブル電源側においてはBMS放電を使い、走りの方(VESCおよびモーター側)はBMSを介さずバッテリーから直接出力を引く放電バイパスとして使い分ける。もちろん充電にはこのBMSを使う。

↑ スペックが素晴らしい。バランス電流は126mA。他と比べてこのバランス電流が大きい。大抵は40〜84mAだ。

過放電保護の3.0Vも素晴らしい。DCバッテリーから家電用AC100Vに変換するための「定格48V DCACインバーター」においては過電圧保護60V、低電圧保護は40Vというのが定番の仕様。この低電圧プロテクションである40Vが少し曲者。

40V ÷ 14s = 2.857V

1セルあたり2.857Vまで下がらないとDCACインバーターのプロテクションが機能しない。2.857Vはちょっと下がりすぎ。それをBMS側で3.0Vまで下がったときに遮断する。つまりインバーターのプロテクションよりも少し手前でBMSがバッテリーを保護してくれる。

インバーター上限の60Vに関しては

1セル満充電4.2V × 14s = 58.8V。

高電圧でインバーターの使用範囲である上から下まで目一杯使えるバッテリー構成が14sなのだ。14sを選択した理由がコレ。

BMSのスイッチは走りにはなにも影響しない。ON、OFF関係なし。VESC側(ストームコア)はBMS介さずバッテリーから直結で繋ぐからだ。

このスイッチは何に使うか?BMSにDCDCダウンコンバーターを繋ぐ際に効果を発揮する。DCDCダウンコンバーターとはDC12VやらDC5Vなどに降圧する装置。これにより電動スケボーのバッテリーからスマホの充電などが出来るようになる。

以前電源機能付き電動スケボーを作った際に(失敗したが)、誤算だったのはこのDCDCダウンコンバーターの待機電力だ。バッテリーに繋ぎっぱなしだと何もしなくてもバッテリーが消耗して最終的にはバッテリーが死ぬ。スマホ充電やらリモコン充電などしていなくても、このダウンコンバーターがどんどんバッテリーから電力を吸い取る。

今回はこのDCDCダウンコンバーターをBMSに接続することにより、使わないときはBMSのスイッチをオフにすることで待機電力によるバッテリーの消耗を無くしつつ、いざスイッチを切り忘れても低電圧3.0Vのプロテクションが掛かり、バッテリーが死ぬのを水際で食い止める。

ひとつ懸念があるならば、充電中にはスイッチをオンにしなければならないのでDCDCダウンコンバーターの待機電力でチョロチョロと放電されつつも、充電器で充電もされるという若干の充電効率の悪さがあること。また少し放電されつつ充電するという状況により、BMSが予期せぬ動きをするかもしれない。

最後にBMSの許容電流最大90Aという強烈な出力もメリットだ。例えば1セルあたり3.2Vとヘロヘロの状態でも、

3.2V × 14s = パックあたり44.8V

3000W ÷ 44.8V = 66.96A

電圧サグを加味して満充電付近の4.0Vで想定すると

4.0V × 14s = パックあたり56V

3000W ÷ 56V = 53.57A

おおよそ50〜70A出力できれば良いということになる。最大出力90Aあればかなり余裕だ。バッテリーがヘロヘロでもDCACインバーターで3000Wを吐き出せる。そして過放電に対するBMSによるプロテクション付き。実際のところ3000Wの家電などほとんど無いが、電子レンジ等の突入電力にも余裕で耐えるという意味では3000Wはひとつの指標となる。

・・・ということで、頭の中ではかつてない電動スケボーが出来上がっている。あとはこれを実現できるかどうかだ。