21700 時代

ここ最近の海外のDIYを見ると21700セルの使用率がかなり上がったように思える。人気なのはSamsung 40Tだ。

40Tは公称最大30A放電と言われているが、実際には25Aあたりのようだ。25Aでも充分ではあるが。容量は4000mAh。40TはBackfire miniでは1pで使われており1並列でも充分にパワーがある。

少し前にもてはやされた18650 30Qは公称最大15A放電。しかしながら実際には20Aまでどうにかイケるという話もある。30Qの容量は3000mAh。

このふたつ、電動スケボーにおいてはどちらが有利かと問われれば40Tの圧勝だろう。昨年まで21700の使用率がイマイチだったのはコストの問題と、サイズが適応するエンクロージャーが存在しなかったことに起因するが、21700の良さがイマイチ理解されていなかった面もあると思う。

↑ 仮に4p(4並列)を想定して、電動スケボーにおいて十分に速い・パワーがあると言えるであろう40Aを出力したとする。つまり1セルあたり10A。赤い線の30Qはガクーンと電圧が落ちる。対して青い線の40Tははるかに余裕がある。

これにはもうひとつ見るべき点がある。グラフにおける1.75Ah時点まで放電した時の電圧は30Qはおおよそ3.4V。40Tはおおよそ3.6V。これをワット数ベースで計算すると、この時点での30Qの総出力は1セルあたり34W(3.4V × 10A)、40Tだと36W。

10sなら340Wと360Wの違いだ。実際に走っている時にモノを言うのはワット数なので、同じワット数を出力するなら、40Tは30Qに対してもう少しアクセルを緩められる、つまり少なめの電流で済む。逆に30Qは40Tに対抗するならもう少しアクセルを開けなければならない、つまり少し多めの電流が必要になる。

グラフでは電流と電圧の相関関係を表すが、ワット数ベースだとさらに差が広がるのだ。

電動スケボーは限られたスペースに平たくセルを積むので、シングルスタック(セル1段積み)で考えた場合、厚さに関して18650と21700の差はわずか3mmである。そして10s4pシングルスタックとした場合、

30Qは 360mm x 130mm 2.0kg 最大放電公称60A(実質80A?)

21700は 420mm × 140mm 2.8kg 最大放電公称120A(実質100A?)

デッキにもよるが、積載可能ならば21700のほうが何かと有利だ。より多くのパワーとレンジが手に入る。

また容量ベースで考えると432Whとして

30Q 10s4p 360mm ×130mm 2.0kg 最大放電公称60A(実質80A?)

40T 10s3p 315mm × 140mm 2.1kg 最大放電公称90A(実質75A?)

微妙だ。前後45mmのスペースさえ惜しいならば40Tというところか。

↑ 別件ではあるが、公称最大15Aのサンヨー20700Bと公称最大10AのSamsung 50Eを比べてみた。8p構成40Aを想定して1セルあたり5Aで放電した場合、電圧の落ちが緩やかなのは50Eである。

↑ 10Aで放電したとしても、意外にも50Eは粘る。

↑ 30Qと50Eの比較。10Aで放電しても50Eのほうが余裕がある。

↑ 実際にアクセルを全開にしている時間は案外少ない。現実的な走りを想定してユルめの3A(8pで24A)で比較すると、もうその差は歴然。24Aは中華ESC相当のパワーだ。

最近私が50Eを選ぶのはこれが理由だ。容量が多いわりに放電も悪くないからだ。個人的には、もはや30Qを使う理由はあまりない。

公称値は参考にはなるが、実際にはセルのサイズ、直列並列の構成、容量に加えて放電カーブも参考にしてセルを選びたい。ターゲットとなる電流は最大40Aあたりだろう。パワー派ならもう少し上乗せしても良い。もっと言えばセルによってライフサイクルまで変わるのでこれが正解というものはない。セル選びというのは結局はあなた次第だ。しかし電動スケボーという用途が決まっている以上は使用するセルの種類はだいたい限られる。

私自身、いろいろ考察しながらセルを選ぶと最近は21700をチョイスすることが多いのだ。並列4p以下なら40T、5p以上だと50Eというところか。

セルの比較サイトのリンク

自作データベース(バッテリーセル編)