フレックスデッキとフレックスエンクロージャー

「電動スケボーのデッキは2つしかない。曲がるデッキと曲がらないデッキだ」

これは極端な言い方だが、電動スケボーにおいてこれがめちゃくちゃ大事なことになる。

曲がるデッキと電動システムの組み合わせはboosted boardsが開祖とも言える。Loaded Vanguardデッキを使用して前側にバッテリー、後ろ側にESCとエンクロージャーを分けることで柔軟性を確保した。これが大ウケして中華メーカーが類似したものを出しまくったし、今でも新型としてこの形式で設計されたボードを販売している。

↑ 初代boosted boards。右側のピンクの囲いはバッテリー、左側の緑の囲いはESC。デッキの前後に分割してその間をリボン状の配線で繋いで電力を供給する。リボン状の配線はデッキとグリップテープの間に挟んでいる。

実際に乗り心地は良いのか?実のところ荒れたアスファルトの微振動を多く吸収できるとは言い難い。どちらかといえば波状にウネウネと歪んだ路面の変化をデッキが追従するかのように上手く吸収したり、ちょっと大きめの落下物を踏んだときなどの大きな衝撃をやわらげる感じだ。微振動の吸収はウィールによるところが大きいと思う。

このバッテリーとESCを前後に分割して搭載する方法は欠点がいくつかあり、まず大容量バッテリーを積めない。最近はBackfire 3G プラスがそれでも345.6Whまで積んでいる。

4Ahセル×24個×定格3.6V=345.6Wh

中華ATボードでもWowgo ATがこの方式で504Wh積んでいるが、分割式だと現時点ではこのあたりが限界だろう。

ほかの欠点としては、どうしても構造的にダブルスタックバッテリーとなり、バッテリー及びエンクロージャーは厚くなる。するとバッテリーが地面に当たらないようにと、必然的に車高が高くなる。車高は出来れば低い方がいい。

あとこの方式のせいではないが、デッキが曲がると50km/h以上では怖くて乗れないだろう。この領域だとデッキに関しては柔軟性より剛性が欲しい。

前後分割式の最大の欠点である大容量バッテリーを詰めない欠点を克服するために出てきた方式がフレックスエンクロージャーである。柔軟性と大容量を両立する画期的な方法だ。

↑ Lacroixのジョーズ。エンクロージャーの何箇所かに切り込みが入っている。これによりデッキが曲がってもエンクロージャーも曲がる。中身のバッテリーも分割されているのだ。

↑ Apsu board。これも多段分割式フレックスエンクロージャー。

最近はevolveも似たようなシステムを採用している。しかしevolveのものは少し高級なシステムだ。曲がる基板にセルを載せている。基板には直列を繋ぐための導線はもちろん、BMSのセンサー線もプリントされている。セルと基板の部分には配線が必要ないのだ。

フレックスエンクロージャーは最近出てきたものなのか?と問われると意外にもかなり前からあった。知る限り初めてこれをやったのはBuffalo F1だろう。


↑ 3年前からフレックスエンクロージャーは存在していた。最近のATのブレイク、大容量バッテリー時代の突入となり、フレックスエンクロージャーは再び脚光を浴び始めた。

このBuffalo F1は3年前の悪しき定番だった劣悪ESCのせいで人気になることもなく、ほとんどの人に知られることなく消えた。シングルとデュアルをボタンで切り替えるという謎システムも搭載していた。しかし今ではThe Peakという名称でほぼ同じような見た目で復活している。

The Peakの海外レビュー

前後分割式と、多段分割フレックスエンクロージャー。どちらが正解というものは無いが、やはり沢山のバッテリーを積める多段分割フレックスエンクロージャーのほうが個人的には良いと思っている。

旧evolve GTバンブーシリーズのようにエンクロージャーは分割されておらず1枚タイプでありながら曲がる物もある。

個人的に最悪の組み合わせは、曲がらないガチガチの高剛性デッキにハブモーターの組み合わせだ。これはものすごく乗り心地が悪い。しかも電動スケボーにおいて最も振動を吸収しない組み合わせなので、乗る場所次第では壊れやすい。

今回は少しマニアックな視点からの話だったが、知っていればボードを選ぶひとつの判断材料になるだろう。