12s6pを組む④ハンダ付け

まず電動スケボーに求められるバッテリーパックの特性について。数ある電動の乗り物のなかで電動スケボーは少し特殊な事情がある。まずスケボーゆえにバッテリーを薄く組まなければならない。シングルスタック、ダブルスタックの2通りしかないという状況だ。

シングルスタック・ダブルスタックについてはこちらを読んでいただきたい。

↑ 今回12s6pを組んでいるが、この画像のバッテリーパックも12s6p。しかし電動スケボーではこのような組み方はできないのだ。厚すぎるからだ。

そして振動に強くなければならない。モーターサイクルのようにサスペンションがあるわけでもなく、自転車のようなゴムタイヤにチューブ、またはチューブラー、チューブレスというわけでもない。強いて言えばATタイヤはゴムタイヤにチューブではあるが・・・

ストリートウィールでは振動は避けられない。サスペンションも無いのでモーターサイクルや車とは振動の質も違う。スケボーではガガガッ・・とバイブレーション的な振動だ。

↑ バッテリーセルホルダーというLegoブロックみたいなものを使って組むのが本来のバッテリーの組み方だろう。しかし電動スケボーにおいてはこの方法は難しい。

電動スケボーのバッテリーパックは薄く組まなければならないうえに振動にも強くなければならないのだ。前回は並列セルにおける剛性、接合性について記述したが、全体としてはある程度の柔軟性もなければならない。これは大きいバッテリーパックほど顕著になる。

中華ボードのバッテリーのような10s2pくらいの大きさなら、ひとまとめでガッチリ固めるように組んでもいいだろう。しかし12s6pくらいになるとバッテリーも前後に長くなる。やはり走っている最中にわずかに曲がる。

これだけ大きいバッテリーをすべてをニッケルで溶接してガッチリと一切曲がらないように組んだとしたら、おそらく振動を受け続けることによりどこかでニッケルが剥がれるだろう。ニッケルで全てを溶接する方法はバッテリー全体としてはどこか1mmでも曲がることが許されないバッテリーなのだ。

なので振動やデッキのわずかな曲がりなどの外力を、どこかで逃す必要がある。

↑ そこで今回はこういう組み方をした。eboostedを参考にしている。直列はすべてシリコンケーブル14AWGを3本で繋ぎ、約90Aを流せるようにした。インバーターを通じて電子レンジも使えるくらいの電流を余裕を持って流せるようにしたかったからだ。

1500W ÷ 40V = 37.5A

2割損失があったとしても45A

突入電流で瞬間的に倍になったとしても90A

かなり適当だがこれくらい余裕を見ておけば良いと判断した。

直列を繋いでる箇所である並列間には5mmのネオプレンスポンジを挟んである。これによりケーブルがハンダ付けしてある部分はある程度曲がるようになっている。ここで走行中の振動のストレスや衝撃を逃すのだ。

そしてこの組み方はハンダ付けにおいてもかなりのメリットがある。それも交えてハンダ付けの説明をしていこう。

↑ まずは配線の下準備だ。被覆を少し剥がしてすべてをハンダでメッキする。左のケーブルはまだハンダをしていない方、右のケーブルはハンダでメッキをした方だ。ケーブルは14AWG。この方法ではベターなケーブルサイズだ。12AWGのほうが当然許容電流が大きいが、そのぶん柔軟性がない。

↑ セルの側面にも絶縁紙を貼り、そのうえにネオプレンスポンジを置く。直列の間にネオプレンスポンジを挟むことにより、衝撃緩衝材の役目を果たす。

↑ こんな感じでネオプレンスポンジを挟みながら4直列に並べる。

↑ それをグラステープで巻いて固定する

↑ ニッケルが浮いているが、これによりハンダ付けがものすごく楽になるのだ。それはなぜか?簡単に濡れハンダ状態にすることができるからだ。

↑ このベチャっとしたハンダ、濡れハンダ。これがとても重要で強力な接着力となる。玉みたいなイモハンダはダメ。簡単に剥がれてしまう。配線をハンダ付けする前に、まずニッケルをこの状態にしてからケーブルをハンダ付けする。

↑ 濡れハンダにするにはどうするか?こうしてハンダゴテをニッケルに2〜3秒当ててハンダ付けの対象箇所を熱する。厚さ0.15mmのニッケルなのですぐに熱くなる。ハンダ付けの対象物をあらかじめ熱するのはハンダ付けにおける基本となる。

これをやらずにケーブルを直接ハンダ付けしようとしても、まず上手くいくことはない。

順番をまとめると、ケーブルをあらかじめハンダメッキする。ニッケル側にもハンダを盛る。その後にケーブルとニッケルをハンダ付けで接合する。

↑ コテ先。ニッケルを熱するなら下段左のコテ先がやりやすい。電動スケボーでのハンダ付けは太めのハンダ線と、この下段左のコテ先でだいたい事足りる。電子基板用の細いハンダ線は効率が悪い。できればハンダゴテは温度調整タイプでコテ先が数種類あるタイプをオススメしたい。Amazon.jpで2,000〜3,000円もあれば買える。

セルの電極側にダイレクトにハンダをする方法だと、セルに大きな熱が加わるうえに、セルの中身にもハンダゴテの熱が逃げて濡れハンダ状態にするのが難しい。これはセルを熱で傷めるし、濡れハンダにもなりにくいのでハンダ付けもやりにくい。

今回のバッテリーの組み方のメリットは

・濡れハンダにしやすく、ハンダ付けしやすい。

・熱でセルを痛めにくい。

・パック全体の柔軟性、耐震性を確保できる。

↑ しっかりハンダ付けすればご覧の通り。セルひとつ50g × 24個 = 1.2kgの負荷が掛かっても剥がれない。

↑ 4直列をハンダ付けしたら、グラステープでまとめる。セルのプラス、マイナスの方向を間違えないようにしよう。

↑ 4直列・4直列・4直列の間にもハンダ付けして12直列の完成だ。41.6V。1セルあたり3.47Vだ。黄色の矢印はそのままBMSの順番の流れだ。

↑ 入力8〜60V→USBに出力・5V3Aのコンバーターを繋げてスマホの充電を試してみた。だいたい1Aで充電できているようだ。これでスマホ充電機能つきのバッテリーパックを作れる算段がついた。

次回はBMSの配線をやります。