12s6pを組む③スポット溶接

スポット溶接はバッテリーを組む上で不可欠の工程。前回の絶縁紙はやらなくてもバッテリーは組める。(そのかわり何かと不安が残るが)

必要なのはスポット溶接機、ニッケルストリップ、そしてリチウムイオンセル。

↑ 私が使っているのはSunkkoの709AD+だ。公式から買った。

Sunkkoの公式は配送も早い。

Amazon.jpなどで買うとボッタクられるので気をつけよう。倍以上の値段で買う羽目になる。

↑ 709A。Amazonだと約5万円だが、Sunkko公式なら$180で買える。

↑ ニッケルストリップ、ニッケルタブ等と言われているもの。ハシゴ型やテープ型などがある。用途によって使い分ける。これも国内で買うとボッタクられる。バッテリーセル販売店やBMS販売店、スポット溶接機販売店などで併売されているのでそこから買うのが手堅い。

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↑ ハシゴ型のニッケル。所々に切り込みが入ってるタイプ。この切り込みを間に挟んで溶接棒針の2点を当てることにより、熱が逃げにくくなって溶接がしやすくなるというタイプ。切り込みにはしっかり意味があるのだ。こういうタイプなら溶接ペンが適しているだろう。ハシゴ型なのでニッケルを二重に重ねる必要もない。溶接ペンについては下に記載する。

まず使用するニッケルストリップは0.15mm厚が望ましい。0.2mm厚は溶接が困難である。

↑ スポット溶接機大手のSunkkoの公式より。ニッケルを2重に溶接する場合の事について書いてある。0.2mm厚のニッケルストリップを2枚重ねて溶接するのはほぼ無理である。0.15mmが使いやすい。0.2mmは柔軟性にも欠けてとにかく使いにくい。

↑ そして溶接機のモデルによっては溶接ペンが付属しているモデルもある。上の画像の溶接機のど真ん中にあるのが固定溶接ヘッド、右の赤いモノが溶接ペン。私は溶接ペンでの溶接はオススメしない。

↑ これもSunkkoの公式より。溶接ペンはあまりに損失が大きく確実な溶接が難しい。ペンと溶接機を繋いでいるワイヤーに大幅に熱を奪われる。20pなどデカいバッテリーを組むときに使うくらいだろう。電動スケボーのバッテリーくらいだとせいぜい2p〜6p、例外的に8p、10p、12pもある。しかしすべて固定溶接ヘッドを使用することを推奨する。

ペンを使った方が腕力でニッケルストリップとセルを上から押さえつけて圧力を掛けやすいと思いがちだが、溶接の熱エネルギーの方がはるかに優先度が高い、というより確実な熱を瞬時に発生させたうえでしっかり圧力を掛けるのが大事。溶接ペンはエネルギー損失が大きすぎて圧力を掛ける以前の問題となる。

↑ 少し見づらいが709ADの参考設定。固定溶接ヘッドで0.15mmの厚さなら出力ダイヤル設定3〜4、パルス4Pでほぼ問題ない。二枚重ねでも十分な溶接を得られる。ところが溶接ペンだと出力ダイヤル6〜7まで上げなければならない。

↑ 溶接は確実に。赤い円で囲んだ一箇所の溶接、なおかつ二重にしているニッケル2枚目の溶接。これで50g ×6セル=300gを保持できるくらいの溶接じゃないとダメ。溶接したら引っ張って確認しよう。簡単にペリッと剥がれるようでは話にならない。

今回、015mm厚 × 30mm幅という少し特殊なニッケルを使っている。理由は許容電流を上げたいのがひとつ、そして電動スケボーならではの事情があり、他ではやらない(ポータブルバッテリー、Eバイク、その他電動の乗り物) 特殊な組み方をする。これは次回のはんだ付けで解説する。

ハシゴ型やテープ型のニッケルなら問題ないが、そんな幅のあるニッケルだとプラス極の位置がわからなくなるのではないか?という疑問もあるだろう。いちおうある程度どうにかする方法がある。

↑ ご覧の通り、プラス極が全然見えなくなる。とりあえずわかりやすい箇所だけ数カ所溶接してニッケルを固定する。

↑ そのあとドライバーやペンチなど工具の持ち手などでスクラッチカードを擦るようにニッケル全体をゴシゴシと押すと、プラス極が浮き出てくるのだ。浮き出たところを溶接すればよい。これはサンヨーのセルがやりやすい。サンヨーセルはプラス極が少し出っ張っているからであり、ゴシゴシと擦ればしっかりとニッケルに浮き出る。ソニーのセルはやりづらい。

スポット溶接はグルースティック、グラステープに続く、第3の並列セルの接合と剛性を強化する要素にもなるのだ。ここまでやればまずセルがバラけることはないだろう。

最後にいくつかのポイント。

まずしっかり溶接できる設定で、なおかつニッケルが下の溶接する対象に触れていることが大事だ。溶接対象とはセルの電極や1枚目のニッケルなどだ。それに対して重ねるニッケルが浮いていた場合、火花が飛んでニッケルに穴が開く。つまり一枚のニッケルに対して溶接棒針を当てているに等しい状態だ。圧力を掛けることも大事だが、ニッケルをドライバーなどの工具の持ち手などであらかじめゴシゴシと押さえつけて浮かないようにしておくのも手だ。

そしてスポット溶接の連打はやめよう。カコンッ、溶接したら一息してからもう一回みたいな感じがよい。いまいち溶接が上手くいかないからといって、カコカコカコンッと1秒間に3回以上連打するとスポット溶接機が壊れる。しかも連打は意味がない。

固定溶接ヘッドを使う、しっかりした出力およびパルス設定、0.15mm厚の1枚目および2枚目までで、0.2mm厚以上はなるべく使わない、溶接対象に隙間を作らない、ある程度の圧力を掛ける、などの条件が揃えば大抵は上手くいくはずだ。

↑ スポット溶接機購入の際は110Vを選択しよう。220Vは他国向けである。中国からなら発送が早い。なお60Hzと書いてあるが、私は50Hz地域に住んでいてそのまま使っているが問題はない。

溶接をやり直す場合は、ペンチなどを使ってニッケルをメリメリと剥がす。甘い溶接だと簡単に剥がれるが、キッチリと溶接してあると電極にニッケルがチギれて残る。ある程度はペンチで引っ張り剥がしたりニッパーなどで切り、わずかな残りはリューターで削って平滑にすればよい。

次回はハンダ付けについて。ついでに電動スケボーならではのバッテリーの直列の繋ぎ方も解説していく。